2022年観劇日記
 
   言葉のアリア Season 3 ハルジオン第6回公演
       花言葉は「追想の愛」 『ペリクリーズ』    
     No. 2022-008

 「言葉のアリア」の公演を観るのは昨年の『から騒ぎ』以来二度目となる。
 シェイクスピアの作品に独自のテーマ性を持たせ、かつエンターテインメントを求める脚色・演出の佐々木雄太郎は、今回シーズンの冠名に「ハルジオン」を冠して、その花言葉である「追想の愛」をテーマに、「過去の不幸を乗り越え、現在を生き、未来を見据えて生きていく」ことに置いている。
 海をめぐるペリクリーズの遍歴と娘マリーナとの再会、そして妻セーザの甦り(再生)の物語り『ペリクリーズ』は、そのテーマに恰好の材料を提供してくれるだけでなく、詩人ガワ―の各場面におけるプロローグはこの物語をホメロスの『オデッセイ』的叙事詩性を添えることで恰好のエンターテインメントともなっている。
 このテーマ性とエンターテインメントという試みはすばらしいのだが、惜しむらくは出演者の演技力と台詞力がマッチングしておらず、そのテーマ性が体現化されていない。特に、マリーナが登場してからの後半部、ペリクリーズとの再会に至るまでのマリーナの台詞表現と演技がこのテーマ性と感動的な場面を台無しにしてしまっていた。
 前回とは出演者が異なるものの、今回の出演者の一部に、その台詞回しにはついていけないものがあった。
 主演のペリクリーズには青海アキ、詩人のガワ―と女郎屋のおかみに、前回の『から騒ぎ』にも出演していた黒須みらい、セーザとアンティオカスの王女に鈴原紗央(彼女も『から騒ぎ』にクローディオ役で出演)、マリーナとリコリダに沖田桃果、ほか総勢10名。
 上演時間は、休憩なしで1時間40分。

 

訳/小田島雄志、脚色・演出/佐々木雄太郎、舞台美術/澁澤萌
4月24日(日)13時開演、西日暮里・キーノートシアター、チケット:(A席)4000円


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