高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   G. Garage/// 第3回本公演 
        河内大和の演出・主演 『リチャード三世』     
No. 2022-005

 2013年に旗揚げしたという河内大和が主宰する劇団名"G. Garage///"の3本のスラッシュは、第3回本公演を表しているものと思っていたが、「ジー・ガレージ・スリースラッシュ」と読むというのは、観劇当日配布された無料のプログラムで知った。
 劇団の概要を見ても名前の由来について触れていないので劇団名の意味する内容は分からないが、分かったのはシェイクスピア劇を専門に上演するユニットであるということと、その上演に当たっては英国の古典であるシェイクスピアを「日本人の感覚で、日本人の身体を通して発することで、日本語によるシェイクスピアの世界が広がっていく・・・身一つで重力をも変容させることができる表現者たちと、垣根を超えた創作を行っていく団体」であるということだった。
 身体的異能さを大きな特徴とする河内大和については、りゅーとぴあ能楽堂シェイクスピアシリーズからカクシンハンに所属していた時からずっと見続けてきているので、「身一つで重力をも変容させる」ということについては肌身で感じてきたので理解できる。
 今回、本公演第3回とあるが、この劇団での河内大和のシェイクスピア劇を観るのは初めてである。
 幕開きはランカスター家に勝利したヨーク家の栄華を誇る宴会の喧騒の場から始まり、河内大和が演じるグロースター公リチャードの悪党宣言の独白へと続く。
 真以美が演じるリチャードに口説かれるアンは喪服の黒の衣装、その真以美がもう一つの役、マーガレットとして登場するときの衣装は上下真っ白なスーツ、しかし上着の下半分は大きく血痕のあとが拡がっており、血の殺戮の痕跡を可視化している。
 リチャードの兄クラレンスの死もドラム缶の中で死んでいる姿をエドワード王の前にさらされるの初めとして、登場人物たちの処刑による死の痕跡は舞台上ですべて可視化される。
 カクシンハン時代からの河内大和の演技には、演技のジョーク、遊びが目立ったが、この『リチャード三世』の舞台でもそうであった。その遊びは彼だけではなく、出演者のそれぞれにも言えることだが、なかでも白倉裕二が演じるヘイスティングズ卿は、刑場に引かれていく際、何度も獄吏の拘束から離れて舞台奥から引き返してタップを踏む。これから処刑されるのをむしろ楽しんでいるかのようであった。
彼が処刑された後、その首が入っていることを示す朱に染まったビニール袋の上に白い風船が取り付けられ、その風船には紙切れが貼りつけられている。ビニール袋の中身と張り紙の文を読んだ市長が驚きをもって、市庁舎へと駆け込む。その後をリチャードがバッキンガムに追わせるところでストップモーションとなって、休憩に入る。
二幕目は、そのストップモーションを再現したところから始まる。
 異色な演出は、リチャードの前に彼が殺した者たちが登場する夢の場面で、場面は真昼のように明るくなり、リチャードの前に、クラレンスを筆頭にして殺された者たちが順番に現れる。
 リッチモンドとの戦いの場は、リチャード一人の台詞で表現され、最後は舞台奥からリッチモンドが射た矢でリチャードは倒れ、リッチモンドが白バラと赤バラの統合宣言で終わる。
 出演は、他にバッキンガム公の鈴木彰紀、王妃エリザベスの山口磨美など、総勢17名+音楽演奏家2名。
 劇の進行中もそうであったが、フィナーレのドラムとサックスの演奏の喧騒で耳が痛くなり、思わず耳を塞いでしまった。上演時間は、途中10分間の休憩をはさんで、2時間40分。

 

翻訳/松岡和子、上演台本・演出/河内大和
音楽演奏/副田整歩(サックス)、ユージ・レルレ・カワグチ(ドラム)
1月31日(月)13時開演、すみだパークシアター倉、チケット:6500円、座席:D列7番

 

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