高木登 観劇日記2021年 トップページへ
 
   劇団フライングステージ公演 『贋作・終わりよければすべてよし』    No. 2021-018

 「ゲイ(芸)は身を助ける」というが、「ゲイはゲイを見抜く」というのが、この劇を観ての感想。
 ゲイを公言する演劇集団「劇団フライングステージ」の贋作シェイクスピア劇は、シェイクスピア劇のダイジェスト版であるだけでなく、シェイクスピアを知らない観客をも十二分に楽しませてくれる。
 一昨年暮れに観た『贋作・から騒ぎ』の観劇日記にも書いたが、上演時間としては半分以下に圧縮されているものの原作の内容の全容がほとんど描き出されている。
 舞台の場所を、フランスをゲイで有名な新宿2丁目にし、フローレンスとシエナの争いを、練馬ナンバーはダサいと車のナンバーを杉並にしたことから杉並と練馬との争いに置き換えられ、仲裁役のオーストリア公は世田谷の女王に置き換えられる(世田谷の女王は台詞の中に出てくるだけで実際には登場しない)。
 ヒロインのヘレナは片思いのロシリオン伯爵バートラムから人前でも「女装」と公言され、貴族のラフュ―も女性の姿、彼女(実は彼)だけがバートラムの友人と自称する家臣のペローレスが実はゲイであることを見抜いている。
 ヘレナはフランス王ならぬ新宿2丁目の王の病気を治すのに「わたし、失敗しませんから」と言うが、この言葉がキーとして最後の場面で繰り返される。
 王の病を治したヘレナはバートラムを結婚相手に選ぶが、彼女を嫌うバートラムはヘレナが女装であることを決め台詞にして断ると、新宿は「同性婚」が認められていると言って、王はバートラムの拒否を受け入れず、二人を結婚させる。
 不本意な結婚を強いられたバートラムは、自分が嵌めている指輪を彼女が手に入れ、バートラムの子を生んだなら夫と呼ぶがいいとヘレナにあてて手紙を残し、母親には彼女とは永遠にベッドを共にしないという手紙を送る。
 女装であるヘレナがトリックベッドでバートラムの子を孕むのはあり得ないことだと不思議に思われる場面で、医術を心得るヘレナは「わたし、失敗しませんから」と言葉を返す。
 ペローレスは戦場で敵方に太鼓を奪われ、それが元で彼の臆病と卑劣さがばれてバートラムとの縁が切られ零落し、その正体を最初から見破っているラフュ―の前に女装の姿で現れる。
 「ゲイはゲイを見抜く」と最初に書いたのはこのことを指している。その「ゲイ」は「芸」にも通じる。
 出演は、バートラムの母である伯爵夫人に関根信一、バートラムに芳賀隆宏、ヘレナにエスムラルダ、ペローレスに岸本啓孝、ラフュ―にオバマなど、総勢12名。
 上映は、1時間20分。

 

台本・演出/関根信一
12月29日(水)14時開演、新宿シアター・ミラクル、チケット:2000円、座席:B列11番


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