高木登 観劇日記2021年 トップページへ
 
   言葉のアリア・season 2 赦しの章、第4回公演  『から騒ぎ』  No. 2021-010

 「言葉のアリア」の主宰者でこの舞台の演出者である佐々木雄太郎の挨拶の言葉を借りれば、この劇はエンターテインメントであると同時に、「赦し」の心を通じて、生きとし生ける人々の共感の場を産み出そうとするものであり、この試みと意図そのものは汲むべきものが大いにある。
 また、この舞台の特徴として、二組のヒーローとヒロインをすべて女性が演じるというキャスティングと、原作のドン・ジョンをドン・ペドロの妹ジョヴァンナとして置き換えているところにあった。
 アーシュラとマーガレット役の二人がメイド服のような衣装で登場してのマエセツの口上で、この舞台の全貌が見えた気がしたが、残念ながらその予想通りであった。
 というのも、ベネディックとベアトリスを演じる二人の台詞がかん高く、耳にガンガン響いて自分には頭が痛くなってしまったし、ズボンのポケットに手を突っ込んだまましゃべるドグベリーの演技とせりふ回しにも違和感があった。
 全体的には、シェイクスピアのせりふ劇としてはその台詞力に不満が残るものであったが、この劇の主題としての「赦し」については、最後の場面でレオナートがマーガレットと結ばれることを示唆してボラチオを許し、ジョヴァンナをベネディックが仲介してドン・ペドロに赦すよう説得し、ペドロは妹の不始末は自分が妹の面倒をよく見てやらなかったからだと改心しての謙虚な「赦し」の場面がこの劇の救いとなっていた。
 個々の不満はあったものの、若い人たちのシェイクスピアの新しい解釈での取り組みの姿勢に敬意と称賛を贈りたい。
 出演は、ベネディックにシミズアスナ、ベアトリスに水谷千尋、クローディオに鈴原紗央、ヒーローに星乃彩月、ドン・ペドロに須藤翔、ジョヴァンナと書記の二役を黒須みらい、ドグベリーに木ノ下藤吉、ほか、総勢14名。
 上演時間は、途中休憩なしで2時間。

 

 【蛇足】
 この日、出かける直前の激しい雷雨で一旦は観劇を諦めたが、幸いぎりぎりの時間で雨も小降りとなり出かけることができた。
 個人的な不満は別にして、隣の席の男性は心からの激しい拍手をおくっていたので、それなりのファン層の熱狂的支援が見て取られ、それについていけない自分の年齢を考えさせられた。
 座席はD列となっているが、最前列であった。

訳/小田島雄志、脚色・演出/佐々木雄太郎、舞台美術/澁澤萌
7月30日(金)14時開演、中野・劇場MOMO、チケット:4000円、座席:D列9番


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