これもコロナの影響か、あっけなくすべてが終わった、というのが正直な感想。
出足はいつものようにダンサーの登場で、一瞬、ダンサーの舞踊で魔女の台詞が代用されるかと、ある種の期待感を持ったが、ダンスの後で魔女の台詞が続き、後は淡々と場面が展開されていった。
ほとんどのアクション場面が短い台詞で代用されるだけで実際のアクションはなく、バンクオーの暗殺場面も魔女を演じた3人が魔女の衣装で暗殺者となって登場し、立ち回りもほとんどないままバンクオーは殺される。
魔女を暗殺者に仕立てるのも全体の中での魔女の役割として一つの解釈、演出法として少し期待して見ていたのだが、マクダフの城を襲ってマクダフ夫人を殺害する場面の暗殺者は全く関係ない人物となって一貫性がなく、期待倒れになった。
バンクオー暗殺の夜の宴会の場面もなければ、最後のマクダフとマクベスの一騎打ちの戦いの場面もなく、その場面におけるアクションはまったくなく、マクベスも剣を振りかざして象徴的に死ぬが、その死に方もあっけなく、戦闘がそこで終わったと気づく間もなく、マルカムの王位奪還と戴冠式の事が語られてすべてが終わる。
場面の大幅カット、省略、台詞構成も有名な個所のエッセンスをもとにしているだけの肉体のない骨格だけのようで、生きている血が通って感じられなかった。
名台詞とされている箇所もエキスだけでは台詞が生かされてこない。
これまでもパク・バンイルの演出の『マクベス』をいくつも観てきたが、その都度斬新な趣向を織り込み、刺激的な舞台とエンターテインメントの面白さを融合させて楽しませてくれてきただけに、今回はあっけなさだけが残った感じで物足りなかった。
出演は、マクベスにパク・バンイル、マクベス夫人に君島久子、ダンカンに調布大、バンクオーに深沢誠、マクダフにムンス、他ダンサー専任の3人を含めて、総勢20名。
上演時間は、途中10分間の休憩を入れて1時間50分。
台本構成・演出/PARK BANGIL
6月10日(木)19時開演、座・高円寺2、料金:5000円、座席:G列7番
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