『オセロー』は、新地球座の荒井良雄娑翁劇場では2016年4月の第4回公演で、同じく高木の台本構成で一度上演しているが、そのときの登場人物は、オセロー、デズデモーナ、イアーゴー、イミーリヤの4人であった。
今回は珍しく、というか初めて、なんとイアーゴーの登場しない、オセローとデズデモーナ、そしてイミーリヤの3人だけで演じるという、登場人物を指定しての台本作りの要請があった。
シェイクスピアの四大悲劇ではタイトルロールの主人公が一番台詞の量が多いのだが、ただ一つ例外はこの『オセロー』で、主人公のオセローよりイアーゴーの台詞のほうが多くなっている。
台詞の多さだけでなく、この劇のテーマである嫉妬のプロセスの画策者であるイアーゴー抜きで、いかにしてオセローの嫉妬を描き出していくかが、台本構成に当たって大きな課題となった。
案ずるより産むがやすしで、これはオセロー演じる久野壱弘の朗読演技で見事にカバーされた。
新地球座のメンバーでは、女性は代表の倉橋秀美一人で彼女がデズデモーナ役は前回と同じく決まりだが、こんかいイミーリヤ役を高橋正彦が演じることになっていたのも楽しみの一つであった。が、これは素朴な感じで素直によかった。
デズデモーナ演じる倉橋秀美の清水英之作曲による「柳の唄」も、哀切のこもる歌唱で心を揺さぶられた。
坪内逍遥の翻訳と内容は変更しないという基本に立っての台本構成は、登場人物の台詞の抽出にすべてがかかってくるのだが、その選択と構成はおのずと構成者としての演出の姿勢が入り込んでくる。
それでいつも自分の台本を手元に置いてこの朗読劇を観ているのだが、一部異なる構成や台詞の取捨選択に演出者の考え、見方を見ることになり、その演出での取捨選択が、興味であると共に非常に参考にもなっている。
今回は、冒頭部の台詞構成と、最後のオセローの台詞の一部変更にその意図がよく表れていて、自分の演出意図とは異なる演出者の心意気を見る思いであった。
このコロナ感染拡大の折、何はともあれ、年内最後の公演を無事に終えられたことを祝したいとともに、このような時期にもかかわらず、足を運んでいただいた方々に感謝の意を表したい。
翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦、劇中歌作曲/清水英之
11月25日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン
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