コロナ感染の厳しい状況の中で、狭い空間での舞台上演での感染予防対策を講じながらの演出に工夫が見られる。
換気対策はもちろん、長い時間での密を避けるため、上演時間も前半40分、10分間の休憩を入れて、後半30分というコンパクトな演出で、登場人物も主要人物のウィンザーの女房たちの夫、ペイジ氏やフォード氏の登場もないため、原作の内容を若干捻って改作している。
主だった違いを見ると、まずシャロ―判事の従兄弟スレンダーの召使シンプルを、ペイジ氏の娘アンの恋人である若い紳士のフェントンの役割を担わせ、今一つの工夫としては、フォルスタッフがフォード夫人と二度目の逢引の場面でブレーンフォードのおばあさんに変装してフォード氏らにこん棒で叩かれる場面で、フォード氏の代わりにシャロ―判事がブレーンフォードを悪魔呼ばわりする役に担わせることで代用している。
今回の舞台では、フォード夫人、ペイジ夫人、クィックリーの3人の女性を演じる女優陣が華となって輝いているのが大きな特徴として感じられた。
その3人を演じたのは、君島久子、庄司悠希、鹿目真紀。
彼女らが傍白の台詞を観客に向かって吐く台詞も、彼女らの目を見つめながら楽しく聞かせてもらえた。
中心はもちろん、体を動かすのも不自由なほど詰め物をした太っちょのフォルスタッフを演じるパク・バンイルとなるが、男優陣としてはエヴァンズ神父の深澤誠、医師キーズの蒼優馬、シャロ―判事のムンスがわきを固める。
正味70分の上演であるが、話の骨格であるフォルスタッフの3度にわたる痛い思いをする場面、すなわち、フォード夫人との最初の逢引で洗濯籠に入れられてテムズ川に投げ込まれる話、二度目の逢引でブレーンフォードおばあさんに変装してこん棒で殴られる場面、そして、最後のウィンザーの森で妖精たちによる懲らしめの場面をきっちり入れ込んでいる。
また、シャロ―判事の従兄弟スレンダーとキーズ医師、そしてシンプルのアンとの結婚問題の挿話、キーズ医師とエヴァンズ神父の決闘場面の挿話も織り込んで話の展開に華を添えている。
出演は、ほかにアン・ペイジが野崎藍、シンプルが杉山聖、キーズ医師の召使ラグビーに森彩華で、総勢11名。
スタジオ公演にふさわしい、コンパクトなシェイクスピア劇を楽しませてもらった。
このような形での他のシェイクスピア劇をシリーズ化して、今後ともぜひ続けていってほしいものである。
台本構成/パク・バンイル
10月21日(水)14時開演、両国、スタジオ・アプローズ、料金:3500円
|