高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   マシュー・ボーン振付・演出 IN CINEMA 
    コンテンポラリー・バレー、近未来版 『ロミオとジュリエット』  
No. 2020-012

 時代を今からそう遠くない近未来の、反抗的な若者たちの矯正施設「ヴェローナ・インスティテュート」に設定してコンテンポラリー・バレーにアレンジした斬新な舞台の映像版。
 開演の場面では、舞台中央にロミオとジュリエットの二人の死体がのせられたベッドがスポットライトで照らし出され、そこからすぐに矯正施設の若者たちのダンスが繰り広げられていく。
 施設では看守のティボルトに目を付けられたジュリエットが執拗に追い回されている。
 そこに有力政治家の息子ロミオが両親に見放され施設に入れられる。
 施設のダンスパーティでロミオとジュリエットが出会って二人はたちまち恋に陥る。
 二人は施設の仲間から祝福されるが、そこへ泥酔状態のティボルトが現れて拳銃を持って暴れまわり、彼を取り押さえようとして仲間の一人マキューシオが命を落とす。
 マキューシオの死に怒った仲間たちとロミオとジュリエットが中心になって、ティボルトを絞殺する。
 ロミオは施設を追放されることになるが、父親の金の力で施設に留まれることになる。
 ジュリエットは、施設の女性寮長(?)の手引きでロミオと後朝の逢瀬を過ごす。
その後の二人の運命がドラスティックで、鬼気迫るものがある。
二人の前に忽然とティボルトが現れ、ジュリエットを追い回し、おびえたジュリエットは彼を追い払おうと手に持った短剣を彼の腹に突き刺す。
刺した相手がティボルトならぬロミオであったことに気づいたジュリエットは、傷ついて苦しむロミオを引きずるようにして連れまわし、激しく動き回る。
ジュリエットはティボルトの亡霊に脅かされていたのだった。
舞台中央に、ティボルトならぬマキューシオの死体をのせた寝台が舞台奥から持ち出されてくる。
マキューシオの傍らにある短剣に気づいたジュリエットはその短剣を取って自分の腹に突き立て、息絶える。
マキューシオが寝台から立ち上がり、代わりにその寝台の上にロミオとジュリエットがその台に乗せられ、そこで舞台の始まりと同じ円環構造となって終わる。
この舞台(の映像)を見て感じたことは、『ウェストサイド物語』のダンスシーンと、バズ・ラーマン監督、デカプリオ主演の現代的・暴力的な印象が濃い『ロミオとジュリエット』であった。
舞台の中心的な存在としては、ジュリエット役のコーデリア・プライスウェイトの大胆な演技と、巨体で筋肉質な体躯で圧倒的な存在感を示すティボルト役のダン・ライトが印象的で、ロミオ役のパリス・フィッツパトリックは少年の幼さと甘さを感じさせるマスクであった。
上映時間、1時間30分。

 

演出・振付/マシュー・ボーン、舞台・衣装デザイン/レズ・ブラザーストン、
音楽/セルゲイ・プロコイエフ
6月10日(水)、恵比寿ガーデンシネマ、料金:2200円

 

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