高木登 観劇日記2020年 トップページへ
 
   荒井良雄沙翁劇場 第27回 『ジュリアス・シーザー』(前篇)     No. 2020-004
 

 2015年4月8日に荒井良雄先生が亡くなられた後、同年6月に荒井良雄沙翁劇場第1回が催されて以来、早くも5年の歳月が流れ、今回27回目を迎えた。
 2015年2月、荒井先生が主宰し指導されていた「日英語朗読塾」の最後の例会で台本作りを言われた時には、まだ荒井先生もお元気だったのに突然に亡くなられ、はからずもそれが遺言のようなものとなって、それまでは、荒井先生が残された台本で上演されていたのが、第3回目となる2016年2月も『颱風:テムペスト』から台本構成を担当することになった。
 今回の『ジュリアス・シーザー』は、2016年12月の第8回で朗読上演され、今回はその再演で、出演者はシーザー役の瀧本忠が前回の宮崎精一から変わっただけで、カシヤスの久野壱弘、ブルータスの高橋正彦、ポーシャとディーシヤスの石井麻衣子、キャルパーニャとキャスカの倉杯秀美は前回通り。
 この『ジュリアス・シーザー』(前篇)までは、自分の台本ということで観劇の記録を残しておらず、その時の様子を知ることができず、記録を残すことが改めて必要なことだと痛感させられた。
 3年の歳月によって、自分の台本構成ながら、客観的に、新鮮な気持で聴くことが出来たというのが一番の感想である。
 カシヤスとブルータスには一人での長台詞があり、今回、その二人を演じた久野壱弘と高橋正彦の朗読をたっぷりと聴かせてもらった。特に、久野の表情豊かな演読は観る朗読劇として楽しませてもらった。
 タイトルロールのシーザーを演じた瀧本忠の演読・演技も独特の味わいがあり、見ごたえ、聴きごたえがあった。
男役と女役の一人二役を演じる石井麻衣子と倉橋秀美は、男装と女装の役変りには早変わりで衣装を着替える大奮闘で、男役と女役を見事に演じ分けたのも見どころであった。
いつものことであるが、倉橋秀美の演読は、台詞のない時にも相手の台詞に応じての目の動き、表情の豊かさで目が離せず、それだけでも見ごたえがあり、楽しませてもらえた。
前回と異なる点として、東儀雅楽子さんの笙演奏が取り入れられており、洋劇に和物の楽器の組み合わせで独特の雰囲気を作り上げていたのも今回の特徴の一つであった。
シーザーを倒した一同が一斉に叫ぶ、「平和、自由、自主、万歳!」の台詞を高らかと繰り返して終わる場面は前回の上演を思い出させる印象的なものであった。
いつもならここで終わるところだが、今回は再演ということもあって次回の「後篇」の台本もあることから、「後篇」部のカシヤスとオクテーヴィヤスの最後の台詞を、久野壱弘と高橋正彦によって予告編として演読されて幕となったのも新しい試みであった。
年明けの忙しい時期と寒さのせいもあってか、今回観客はいつもほど多くはなかったが、俳優座の制作担当者IUさんと俳優で演出家のMHさんが観劇され、打ち上げにも参加され、歓談の時を共に過ごすことが出来たのは嬉しい限りであった。

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦、笙演奏/東儀雅楽子
1月22日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(コーヒー付き)


>> 目次へ