高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   OKAMI the 15th 欣喜雀躍新春公演 『シンベリン』       No. 2020-003

 ¬型の観客席に平土間の舞台、舞台奥側に「杉の木」の大木、¬型の舞台の端に上演中使用されるらしき道具類が積まれている。
 開演とともに暗い舞台に出演者全員が登場し、オリジナルの作詞・作曲の劇中歌が歌われる。この曲のメロディーと詞がなかなかよく、この曲はイノジェンが死んだと思われる場面と、最後の場面でも歌われる。
 歌が終わって全員が退場した後、この作品の序詞役ともいえる二人の紳士が、嵐の中、傘をさして登場し、これから始まる物語の過去のいきさつをうわさする。
 続く場面は、足に鎖をつけられたイノジェンと王妃、そして王から追放を宣告されたポステュマスが登場し、イノジェンとポステュマスの仲が引き裂かれ、ポステュマスはローマの友人宅に身を寄せる。
 物語の展開はオリジナルとほとんど変わらないが、多少の変化もつけている。
 台詞や構成は小田島雄志、松岡和子の翻訳にそっているが、ヒロインの名前イノジェンは松岡和子訳にそっている(小田島訳はフォリオ版にそってイモージェンとしている)。
 出演者は全部で13人だが、主人公のシンベリンを演じる今井勝法、ヒロインのイノジェンを演じる御法川わちこ、ポステュマスの真坂雅、ヤーキモーの山中博志、ピザーニオの佐々木覚のほかは一人二役以上を演じる。
 二役の中で、侍医コーネリアスは場面によってローマ軍の将軍ルーシアスやドイツ人の紳士を演じる中山朋文と後半部ではローマ軍の隊長などを演じる佐々木光輝の二人が演じるが、これは最初にコーネリアスを演じていた中山朋文がルーシアスとして登場してコーネリアスの登場とダブるため、その場しのぎの措置だろう。
 人物造形としては、主人公のシンベリンを演じた今井勝法は猛々しく荒々しさがあり、王妃の小林麻子はけばけばしさと憎々しさをにじみ出させ、クロートンは荒っぽい粗雑さを際立たせていた。
 女性ながら男役のベレリアスを演じた禿恵は、女性が演じたことでかえって印象的であった。
 その他の出演者として、王妃と占い師フィラモナスに小林麻子、シンベリンの誘拐された王子(長男)ギデリアスとポステュマスのローマの友人フィラーリオに清水凱、王妃の息子クロートンとちょび髭役に生野和人、ベレリアス、ジュピター、ちょび髭などを禿恵、貴族やシンベリンの王宮の女官などに佐々木咲弥、アーヴィレイガスと女官に山中りさ子。
 この舞台で最も印象に残ったのは、冒頭と最後に歌われた劇中歌、「おやすみ、おやすみ、夏の日の痛みも、冬の夜の別れも、こわがることはない…この世はおとぎ話、深いられた。
 日本での上演が少ないだけに貴重な公演として観劇した。上演時間は、休憩なしで2時間。

【追 記】 『シンベリン』の観劇記録
 1993年9月、パナソニック・グローブ座で英国のコンパス・シアター・カンパニー来日公演、ニール・シッソン演出
 2003年7月と08年7月(再演)、子供のためのシェイクスピア・カンパニー、山崎清介演出
 2011年5月、シェイクスピア・シアターの小田島雄志訳、出口典雄演出
 2011年7月、東京シェイクスピア・カンパニー、江戸馨訳・演出
 2012年4月、彩の国さいたま芸術劇場での松岡和子訳、蜷川幸雄演出

 

脚色/波田野淳絋、演出/中山朋文、劇中歌作詞作曲/坂本弘道
1月19日(日)13時開演、神奈川県立青少年センター・スタジオHIKARI
チケット:3000円、全席自由席

 

>> 目次へ