1年の締めくくりとして、祝祭性の高い『十二夜』(又の名「お好きなもの」)を、祝祭にふさわしい賑やかなものしたいと台本構成にあたってはこれまでになく登場人物を思い切って増やした。
ヴィオロンという狭い空間では舞台にあたるところでは3人でいっぱいであるが、11人の登場人物を5人の俳優で演じる。
出演者とキャスティングをどのようにするのかも興味津々であったが、一人複数役の組み合わせも絶妙で、意外性も加えて期待以上のものであった。
ヴァイオラとマライヤを倉橋秀美、船長、アントーニオー、道化を瀧本忠、マルヴォーリオーとセバスチャンを久野壱弘、オーシーノーとサー・トービーを高橋正彦、サー・アンドルーとオーリヴィア姫を森秋子というふうに、対極的な人物を演じるという趣向になっていて、その落差を楽しませてもらった。
目の表情の演技でいつも感心して観させてもらっている倉橋秀美には今回もその楽しみを十二分に味あわせてもらったが、逍遥訳では薩摩弁のような台詞をあてられているサー・アンドルーを演じた森秋子の台詞回しは見事であっただけでなく、オーリヴィヤ姫との演技は、若々しく艶のある発声で、出演者の中で一番の高齢であることが嘘のようであった。
同じく喜寿目前の滝本忠の声にも艶があり、最後を締める道化の唄の場面では台本をカットして少し短くなっていたが、もっとその声を聞かせて欲しいと思わせるものであった。
久野壱弘のマルヴォーリオーも期待通り、高橋正彦のオーシーノーは予想通りの配役であるが、その彼がトービーを演じたのも面白い組み合わせでよかった。
祝祭性を十二分に楽しませてもらった1時間であった。
翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
11月27日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(コーヒー付き) |