高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   シェイクスピア・シアター公演 『マクベス』
   同時上演 シニア第1回公演 『十二夜』&『ヴェニスの商人』 
     No. 2019-050

 7日に観劇予定であったが、その前夜から体調を崩し熱でふらふら、食事もとれない状態であったので、シニアの出演者の厚意で予定を1日ずらしてもらった。とはいうものの、8日も食事も十分とれないまま、熱もあったが前日一日中寝ていたので起きて動くのも必要と思い、無理を押して出かけた。

●シニア公演 『十二夜』(第2幕5場より、「偽手紙の場」
 『ヴェニスの商人』(第4幕1場と2場より、「人肉裁判の場」)
 半年の訓練の成果発表の場。
 その訓練に耐えたのは、ここでも女性上位で、男性一人と女性4人の5人のシニア。
 うまい下手よりも(とは言ってもじゅうぶんにうまいのだけれど)、演じている出演者が楽しんでいる気持が伝わってくる心温まる舞台であった。
 特に『十二夜』では、その喜劇性を台詞と所作で十二分に楽しんでいる演技がビシビシと伝わってくるものがあり、観ている方も楽しい気分にさせられた。
 『十二夜』の出演者は、マルヴォーリオに島川由美、サー・トービーに渡辺正幸、アンドルーに室伏圭子、マライアに湯山トミ子、フェービアンに高橋美恵子。
 続く『ヴェニスの商人』では、登場人物が7名となるため、公爵役にシェイクスピア・シアターの元劇団員の廣瀬美砂と、ネリッサ役にシアター研究生の加藤友梨が特別参加。
 ポーシャに室伏圭子、アントーニオに渡辺正幸、シャイロックに湯山トミ子、バッサーニオに島川由美、グラシアーノに高橋美恵子。
 人肉裁判の緊張感とスリルをシャイロック、アントーニオ、ポーシャの間で繰り広げる中、グラシアーノがその緊張感を緩和せる演技なども十二分に楽しませてもらった。
 シニアの公演ということで同世代以上の観客も多く、彼ら(というより女性客が多いので、彼女らと言った方がよいが)に希望と感動を与えているだけでも、十分に価値あるものであった。
 上演時間は、2本で40分。

●本公演 『マクベス』
 今回体調がすぐれないなか、無理をして出かけたのはシニア公演を是非見たいと思ったからであるが、本公演で久しぶりに吉沢希梨が出演するということで、彼女のマクベス夫人を楽しみにしていたからでもあった。
 吉沢希梨のマクベス夫人は期待通り、台詞回しと言い、内面性を抉り出すような演技と言い、さすがに抜きんでていて、堪能させてもらった。
 彼女のマクベス夫人に対して誰がマクベスを演じるかも期待の一つであったが、清水圭吾が外面性を強調した精悍な力強いマクベスを演じ、吉沢希梨の相方を見事に演じたのも収穫であった。
 シェイクスピア・シアターでは年齢的には中堅であっても経歴的にはベテランの高山健太のマクダフ(彼は当初のキャスティングでは予定になかったダンカンも演じた)が、台詞力も演技も見事で楽しませてくれた。
 西尾洪介のバンクォーも、清水圭吾、高山健太と並んでこの舞台の芯を固めていた。
 魔女の演出やその他の登場人物の造形では多少不満の残るところもあったが、全体としては、原作に忠実で特に異色の演出はされておらず、終わり方も特にひねった演出もなかった。
 その他の主な出演者は、マルカムに西村一真、ドナルベーンに西山公介、ロスに山口大輔、老シーワードに昆野博史(彼は当初のキャスティングではダンカン王も演じることになっていたが、公演直前に高山健太に変った為、キャスティングにはその変更も知らされていなかった)、シニアの部に出演していた湯山トミ子が魔女1と門番、老人役をしていた。
 主要人物が演技と台詞を楽しませてくれる舞台であった。
 上演時間は、途中10分間の休憩を入れて2時間10分。

 

訳/小田島雄志、演出/出口典雄
11月8日(金)シニアの部:14時半開演、本公演:18時半開演、中野 ザ・ポケット
チケット:(シニアの部)無料、(本公演)4500円、
座席:(シニアの部)B列10番、(本公演)D列7番

 

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