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   荒井良雄沙翁劇場 第25回 『トロイラスとクレシダ』        No. 2019-043
 

 トロイ側とギリシア軍の陣営の二つの場所を舞台にした、伝説的な多くの英雄たちが数多く登場する『トロイラスとクレシダ』。
それを3人の朗読者たちで表現するということで、当初、演出の高橋正彦からクレシダには若い女優にさせ、森秋子を語り部として登場させるアイデアが出されたが、森をクレシダにし、二人の仲を取り持つパンダルフには久野壱弘を想定して、タイトルロールの二人の登場人物に絞った構成にすることにした。
 そのため、台本では開幕時の「開場詞」の場を省略したのだが、演出の高橋はそれを加えて、森にその台詞を語らせたが、逍遥の擬古文体の固い表現を森がソフトに朗読しただけでなく、省略された本文の内容を俯瞰的に伝えるのに効果的で非常に良い結果となった。
 新地球座の朗読劇を、自分は「演読劇」と称しているが、登場人物になり切るという点で、まず衣装からそのように準備することに毎回感心させられているのだが、今回のハイライトは森秋子のクレシダであった
 さくら色のピンクの衣装が実によく似合っていただけでなく、声も20代の女性と言っても過言ではないチャーミングな若々しさと初々しさでクレシダを演じた。
 後半部、クレシダがギリシアの武将ダイオミーディーヅ(ダイオメッド)と対話する場面は、さも相手がいるように語る必要があるのだが、森の演読はあたかも相手がそこにいるように語りかけているように聞こえ、見事な演読だと感心して聴いていた。
 演じると言っても、普通の舞台のようにではなく、3人並んで立てばほとんど身動きが通れない狭い空間のこと、身体を動かしての演技ではなく、演読を通しての演技、つまり、声、朗読が演技となっているのである。
 パンダルフを演じる久野壱弘は、あて書きのつもりで台本構成したが、狙い通りの見事な演読で魅了してくれただけでなく、その台詞回しを楽しませてもらった。まさに、演読劇!!
 主人公の一人、トロイラスを演出の高橋正彦が森の相手役として務めた。
 今回の演読劇今一つで特筆されるのは、劇中の効果音として、ゲスト出演の大河原崇子のピアノ演奏をあげなければならない。場面の転換時だけでなく、台詞と台詞の間にも時に短く、時に台詞と共に伴奏され、台詞の臨場感を大いに高めていた。 
 台本そのものでは40分程度の分量であるが、上演時間は1時間弱であった。


翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、
演出/高橋正彦、ピアノ演奏/大河原崇子
9月25日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(コーヒー付き)

 

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