高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   新地球座と女鹿伸樹による『リチャード三世』             No. 2019-037
 

 雑司ヶ谷シェイクスピアの森主催による「夏の特別プログラム」の一環として、3年前から新地球座を招いて、第一部の英語朗読劇に続いて第二部として逍遥訳で同じ演目の朗読劇をお願いしている。
 演目は、会でその年に読んでいる作品で、今年は『リチャード三世』。
 『リチャード三世』では5年前に女鹿伸樹による朗読劇で強烈な印象を受けて、是非、彼にリチャード三世を演じてもらいたいとお願いしたら、ありがたくも故荒井良雄先生のためならと二つ返事で了解してもらった。
 5年前、荒井先生が主宰されているヴィオロン文芸朗読会で最前列で聴いていたとき、冒頭のリチャードの台詞の第一声で、女鹿伸樹の唾が見事に僕の額に「ピタッ!」とかかったという深い思い出がある。
 そんな個人的な思い出のある上演であるが、『リチャード三世』は、女鹿伸樹個人にとっても思い入れの深い作品で、12年前、阿部良演出による『薔薇戦争』でリチャードを主演しており、その時には、役柄に憑依され、日常生活にまでリチャードが入り込んで、共演者に対しても傲慢になってかなり反発を食らったという。
 そんな思い出の深い作品であるだけに、今回の上演でもその力の入れようは並々のものでなかった。
 たまたま、前日に本番に向けての衣装合わせとリハーサルを見学することが出来たが、その迫力に圧倒された。
 朗読劇となっているが、台本こそ手にしているが、普通の舞台と同じく身体全体で演技する朗読であるので、僕はこの朗読劇を「演読劇」と呼んでいる。
 観客のみなさんは冒頭の登場面から度肝を抜かれたのではないかと思う。
 尼理愛子の琵琶演奏に始まって、観客席の横で、すでにせむしでびっこの様態をした女鹿伸樹が、サササッと舞台中央に躍り出てきて、「やっとヨークの朝彦の天下となったので、我が党の陰鬱な冬が去り」の第一声が発せられ、その目の動き、顔全体の表情、所作、発声、すべてに心を奪われる。 
 女鹿伸樹のリチャード以外でも、第1幕第2場の倉橋秀美が演じるアンとリチャードの台詞のバトルも楽しみにしていたが、これも朗読劇というより舞台を観ているような臨場感に溢れていて、自分が期待していた以上のものであった。
 第1幕第1場でクラレンスを演じた久野壱弘には、マーガレットがしばしば男優で演じられることもあり、芸歴50年を超える彼に是非やってもらいたいとお願いしていた。
 今回のキャステイングは、このように僕の方から新地球座の皆さんには役どころをお願いしていた。
 第一部の英語朗読劇が1幕1場から3場までの抜粋ということで、新地球座の演読劇も同じ場面で台本構成をしていた。
 出演者は、リチャードに女鹿伸樹、クラレンスとマーガレットに久野壱弘、アンとエリザベスに倉橋秀美、そして琵琶演奏を尼理愛子。
 雑司ヶ谷シェイクスピアの森の夏季特別プログラム出演を快く引き受けて下さった女鹿伸樹さん、新地球座代表の倉橋秀美さん、同顧問の久野壱弘さん、そして今回も特別参加として琵琶演奏をして下さった尼理愛子さんに感謝の意を表したい。そして、このプログラムに参加していただいた多くの皆さんに、感謝!!感謝!!
 

翻訳/坪内逍遥、台本構成/高木 登
8月21日(水)13時半開演、雑司が谷文化創造会館・音楽室、参加費:1000円(懇親会費込み)

 

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