高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
    子供のためのシェイクスピア公演 『じゃじゃ馬馴らし』         No. 2019-036

 これまで20年間にわたって見続けてきた子供のためのシェイクスピア劇、今回は、非常に素直な展開、というのが第一印象だった。
 『じゃじゃ馬馴らし』の始まりにはおおむね二通りあって、一つは原作通りに鋳掛屋スライが居酒屋のおかみに追い出され路上で寝てしまい、領主の館に担ぎ込まれて殿様扱いされる場面から始めるもので、今一つはこの部分は全くカットしてしまって、いきなり本編から始めるものである。
 子供のためのシェイクスピア・カンパニーによる『じゃじゃ馬』では原作通りに始まるが、領主の邸での出来事を役者の一行を巻き込んでスライにペトルーチオを演じさせるという趣向にしている。
 スライを演じる役者が本編のペトルーチオを演じるのはごく普通に演じられてきており、このこと自体は特別な趣向でもない。
 この後の展開は最初に述べたように非常素直に進んで行くので、この劇をいくつも観てきた者からすれば先が予想通りに進む既視的な展開を追うことになる。
 今回の演出で特に注目されたのは、終わりである。
 原作でのキャタリーナがルーセンショーの妻ビアンカ、ホーセンショーの妻に聞かせる妻の務めの台詞は、ペトルーチオ一人に向かって語られ、そこで終わって、スライが路上に眠っている場面に移る。
この演出ではその先があって、キャタリーナが再び登場し、終わりの場面の台詞を繰り返し、スライ(ペトルーチオ)とキャタリーナが抱き合い、その他の人物が再び集合して、集合写真を撮るようなポーズをして終わる。
 素直な展開の要因としては、今回、出演者の役柄の一人二役が少なく、その為早変わりもそれほど必要がないので、登場人物の見分けもスムースであることがあげられるだろう。
 加藤記生がホーセンショーとヴィンセンショー、戸谷昌弘がグレミオとマンチュアの教師が一人二役以外は基本的には一人一役。
 このカンパニーの主宰者でバプティスタを演じる山崎清介、全作品出演の戸谷昌弘、それに常連出演者の山口雅義(トラーニオ)、若松力(スライとペトルーチオ)の演技は安心して観られただけでなく、このカンパニー初出演でヒロインのキャタリーナを演じた鷹野梨恵子もヴァイタリティみなぎる演技で若松力のペトルーチオとのやりとりを楽しませてくれた。
 他の出演者として、ビアンカに大井川皐月、ルーセンショーには初出演の川澄透子。
 上演時間は、途中休憩15分を挟んで、2時間10分。

 

翻訳/小田島雄志、脚本・演出/山崎清介
8月19日(月)14時開演、赤坂区民センター・区民ホール
チケット:3800円(シニア)、座席:B列22番

 

>> 目次へ