高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   東京芸術劇場 『お気に召すまま』                 No. 2019-035
 

 公演プログラムを売り込みながら男性が客席通路を舞台正面の方に向かって行くと、突然、客席の女性たちの黄色い絶叫が響き、何事かと驚いた。
 その男性は、舞台正面の客席の位置で、そのままオーランドの台詞を語り始め、老僕アダム(小林勝也)が同じく後方客席通路に登場。
 そして舞台の真紅のカーテンを背に、杖をついた姿でオーランドの兄オリバー(満島真之介)が舞台上手に現れ、オーランドと口論、喧嘩となり、そこで初めて女性たちの絶叫の意味が、オーランドを演じる坂口健太郎に向けられたものであることが分かった(残念ながら自分はこの俳優についてまったく知らなかったので分からなかった)。
 舞台は前方が張り出し舞台の構造になっており、本来の舞台は額縁舞台として真紅のカーテンが引かれており、その奥にもう一つ、一回り小さくした額縁舞台が作られ、同じように真紅のカーテンが引かれている。
 力士チャールズはオリバーの前には登場せず、久保酎吉が演じるルボーがその台詞を取り次ぎ、チャールズは真紅のカーテンにシルエットとして映し出される。
 舞台がここまで進んでくると、客席にいた碓井将大が『お気に召すまま』の物語の概要を説明するが、ここでまずその説明に興ざめしてしまった。
 物語の説明の中で奥の額縁舞台のカーテンが引かれると、パイプで組まれた構造体の真ん中にフレデリック公爵(山路和弘)が腰掛け、その両側にシーリア(中嶋朋子)とロザリンド(満島ひかり)が立っている。
 劇の内容説明が終わるとそのままオーランドとチャールズ(テイ龍進)のレスリングの試合へと進む。
 劇中、シーリアがロザリンドに対して「そなた」と呼ぶのに非常に違和感があり、二人の関係に距離を感じさせたが、舞台の展開においても二人の関係に親密さを感じることはなかった。
 アーデンの森に舞台が移る場面では、奥の額縁舞台上方から衣装がどっと落ちてきて、それが森を表象するだけでなく登場人物がその中の衣装を選んで着用する。
 前半部の終わりは、前公爵(山路和弘)のふるまう食事にありついた老僕アダムは仰向けに寝た姿で、やおら手を弱々しくあげて、そのまま息を引き取る姿を見せ、カーテンが降ろされる。
 2幕目はそのアダムの葬礼の場面が、舞台下手の前方部に置かれたアダムの衣装に登場人物たちが次々と花輪を供えていくところから始まる。
アダムの死は原作にはないが、その後の登場がないのでこの演出はアダムのその後の運命の顕現化という点では面白い試みであると思った。
アダムを演じた小林勝也は、この後タッチストーン(温水洋一)の恋人オードリーを演じる。
ギャニミードとして男装したロザリンドは途中からどういうわけか下のズボンを脱いでしまい、上半身ワイシャツ姿だけになり、太ももから下を露わにする。
オーランドも上着を羽織った形で筋肉質の肉体美(?)をちらちら見せ続ける。
大円団の結婚式の場では、ロザリンドの衣装は、後ろが露わになっていてお尻が丸見え。なんで?
歌い手としてYugiが務めた唄も劇中歌も原作とは関係なく、なんで?でしかなかった。
全体を通しての感じはノイズでしかなく、不満を抱えてカーテンコールも見ないまま早々に劇場を去ったが、しばらく、そのノイズで耳鳴りを感じた。
 上演時間は、前半60分、20分の休憩の後、後半部80分で、2時間40分。

 

翻訳/早船歌江子、ドラマターグ/田丸一宏、演出/熊林弘高、美術/松岡泉
8月4日(日)13時開演、東京芸術劇場・プレイハウス
チケット:(S席)7500円(シニア)、座席:1階S列23番

 

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