今回の『ヘンリー四世』は、二部構成で一部二部を通して数多くの登場人物が登場するのを、一つにまとめただけでなく、出演者・登場人物も3人に絞った構成での大胆な挑戦であった。
『ヘンリー四世』はタイトルロールのヘンリー四世よりフォルスタッフによって一般によく知られている作品であるが、今回は3人の登場人物だけということで、タイトルロールのヘンリー四世と息子ハル王子(後のヘンリー五世)の関係を軸にして物語を展開させることにした。
キャステイングは、ハル王子に倉橋秀美、フォルスタッフに久野壱弘、ヘンリー四世に高橋正彦。
新地球座の朗読劇は、所作をともなったもので、自分はこのスタイルを「演読劇」と呼んでいるが、今回のハル王子とフォルスタッフは、表情、所作の豊かな、まさに「演読劇」で、見せる(魅せる)、聴かせる朗読劇で、観る楽しみ、聴く楽しみを十二分に味あわせてもらった。
久野壱弘のフォルスタッフ相手に、目の動きと顔の表情は、ハル王子が台詞の無い時にも目が離せない豊かなもので、久野のフォルスタッフも自らその役を楽しんで演じているのが伝わってくるものであった。
二部作を一つにまとめた上に、わずか4、50分程度の朗読劇であったが、J大学の大学院生I君、「とても40分であったとは思えない、2時間の内容であった」という感想を言ってくれたのは何よりも嬉しかった。
ハル王子の衣装をはじめ、演出の高橋正彦が用意した王冠の小道具など、いつもながら、こだわりのある、密度の高い演出で、観客に楽しんでもらえたと思う。
今回は予約受付の段階でほぼ満席で、しかも新たな参加者もあり、長らく続いている梅雨空の陰鬱さを吹き飛ばす活気にあふれる例会となり、喜ばしい限りであった。
大学でシェイクスピアを専攻し、同大学主催のシェイクスピア英語劇や外部の英語劇グループに積極的に参加しているI君が友人2人を誘って初参加してくれたのを嬉しく思った。
翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
7月24日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(コーヒー付き)
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