高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   百年先俳優会アトリエ公演 vol.2 『リア王』          No. 2019-029

 元シェイクスピア・シアター俳優内田聡明によって2011年に立ち上げられた百年先俳優会が、このたび北区滝野川にあるマンションの地下の一角に、イギリスに古くから伝わる五月祭にちなんでメイポールと名付けた小さなスタジオを構え、その第1回アトリエ公演に『リア王』を上演。
 百年先俳優会の目指すところは、シェイクスピアの言葉の力を信じてそれを伝えていくところにあるが、この『リア王』も若い俳優たち(年齢でなく、気持の上で若いという意味で)が、小田島訳によるシェイクスピアの台詞の魅力をエネルギッシュに発し、40席ほどの小さな空間を熱く満たした。
 台詞そのものを大事にすることから演出はテキストに忠実で、特別に変った趣向を凝らすわけでもないが、リア王が王国を3分する時に用いる地図を、大量のビー玉を舞台一面にぶちまけることで表象するところが唯一変った趣向と言えるものだった。
 舞台装置は、背景の鉛銀色の2枚の衝立、そこに数個の燭台が嵌め込まれ、開演とともに、一つずつ蝋燭に火がともされ、リア王が退場し、後に残ったゴネリルとリーガンが、後々の相談をしながらその蝋燭の火を、一つ一つ消していく。
 コーデリアの死を嘆いてリアが後を追うようにして亡くなる場面では、衝立が取り払われ、その奥のカーテンが開かれると、亡くなったゴネリル、リーガン、エドマンド、道化、オズワルドなどが横一列に並んでいる光景が現われ、オルバニー公の最後の台詞で幕となる。
 リア王に内田聡明、グロースター伯に鳥居峰明、ケント伯に宮崎聡、コーンウォール公に佐々木雄太郎、オルバニー公に五明紀之、エドガーに石丸躍人、エドマンドに鈴木太二、道化に渡辺美穂子、オズワルドに矢嶋友和、ゴネリルに山時未彩、リーガンに杉山愛実、コーデリアに平井愛莉、他。
 上演時間は、途中休憩10分を挟んで、2時間30分。

 

訳/小田島雄志、演出/内田聡明、舞台監督・音響/芦屋 透
6月1日(土)16時開演、メイポールスタジオ、チケット:2500円、全席自由席

 

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