2007年に『マクベス―シアワセのレシピ―』として初演され、2010年に再演、今回は再々演となり、タイトルも『#マクベス』と改題してキャステイングも一新されているという。
残念ながら初演も再演も観ていないので比較はできないが、この劇団のシェイクスピア劇は2014年の『終わりよければすべてよし』以来、二度目の観劇となる。
開演とともに始まる恒例のマエセツの今回の担当は、劇中ダンカンを演じるちょびつき雨宮。
今回のマエセツは『マクベス』に関する3つの質問で、全問正解者に4000円の賞品ということで、6人の解答立候補者の中から抽選で選ばれた女性が、見事、ゲットされた。
マエセツに引き続いて舞台はそのまま、8人の出演者全員による身体的所作による激しい動きから展開される。
この劇団の特徴としては、オブジェ(小道具その他)とこの身体的所作(フィジカル・アクション、或はフィジカル・ムーブメント)で、今回のオブジェは白いビニール袋と、背中の部分が梯子のように高く伸ばされた椅子が4脚。
3人の魔女は、2人一組が黒子となってこのビニール袋を魔女に仕立て上げて操り、マクベ主人が読む手紙も、幻の短剣も、このビニール袋で表象される。
ストーリーの展開は基本的には原作に沿っているものの、所々で原作とは異なった演出がされている。
そのいくつかの例として、
マクベスがコーダーの領主の称号を受けるのはダンカン王自らで、そのコーダーの領主の裏切りは敵の謀略の偽情報ではないかという「噂」がささやかれ、マルカムが王位継承者としてカンバランド公となると、再び、「噂」が、国難が迫っている時に軟弱な人物が王位につくことを懸念し、マクベスこそふさわしい人物であると噂する。
マクベスがダンカンを殺害する夜、寝付けないバンクオーとの会話する場面は、バンクオーではなくマクダフに入れ替えられている。
戴冠を祝う祝宴で、暗殺したバンクオーの亡霊におびえたマクベスを、親友であるバンクオーを殺したことをマクベス夫人は責め、マクベスは逆切れして夫人と口論となり、二人は険悪な関係となり、夫人は正気を失っていく。
夫人は、赤ん坊の形に膨らませた白いビニール袋を両腕で抱いて、子守唄を唄うようにしてあやしながら動き回り、自死する。
マクダフがマルカムに決起を促す場面の台詞も大幅に変えられている。
劇は、台詞劇とともに、フィジカル・アクションを交えつつ、白いビニール袋のオブジェを巧みに変化させながら用いて、テンポよく終盤へと進んで行く。
マクベスが倒れ、マルカムの新しい時代の宣言は、「噂」の人物たちの疑問の声でかき消されていき、暗転して幕となる。
主な登場人物のキャステイングは、マクベスに荒井志郎、バンクオーに大窪晶、マクダフに青木まさと、マルカムに今野健太、ダンカンにちょびつき雨宮、マクベス夫人に中原くれあ。
海外公演も多いせいか、英語、中国語の二か国語の字幕が用いられていた。
中国語でマクベスは、「麦克白」。
今年、8月にこの『#麦克白』が、マカオでの招聘公演が予定されている。
上演時間は、マエセツ含め、90分。
構成・演出/佐川大輔
5月31日(金)14時30分開演、調布市せんがわ劇場、チケット:3500円、全席自由
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