高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   『K. テンペスト2019』東京公演                No. 2019-025
 

2017年3月、神奈川芸術劇場での再演以来、再々演の公演。 
狭い通路を通って舞台にたどり着くと、平土間の舞台の周囲に客席の椅子が雑然と置かれ、平土間より心持ち高くなった二階席と三階席の客席数もそれほど多くない、ぜいたくな作りとなっている。
前回の観劇の様子も比較的詳しく残しているので、その違いを中心に記述してみる。
開演前の様子は前回と同じく、観客が入場してきて客席につくと、出演者たちがランダムに観客に話しかけてくる。その話題もさまざまであるが、そのことによって観客と出演者たちとの距離感が縮まっていく。
開演の合図もないまま、雑談との切れ目もないまま開演される。
前回はナポリ王アロンゾー役の真那胡敬二が口上役というかマエセツ役を務めたが、今回はステファノ―役の大森博史がそれを務め、小さな帆船の模型を持って大航海時代について語る。
舞台上には4つの机を二列にくっつけて並べて長テーブルとし、その両側にプロスペロー役の串田和美とミランダ役の湯川ひさが対峙して座っている。
嵐の場面の後、その他の出演者たちが長テーブルに台本を持って座り、プロスペローとミランダの二人の台詞を入れ代わり立ち代わり読み上げるが、その間、プロスペローとミランダは沈黙して対峙したままである。
その後はプロスペロー、ミランダともに自分で台詞を語って普通どおりに展開していく。
当初長テーブルとして使われていた個々の机は、その後の展開で色々な使われ方をし、時には舞台上から全部消えたりし、その目まぐるしい変化とともに重要な役割を果たす。
前回と同じくこの劇はシェイクスピア幻想音楽劇 と銘打っており、途中に挿入される独特な音楽が大きな特徴の一つとなっている。
今回も、前回も出演していた飯塚直が、喉歌ホーメイといわれる声楽を楽しませてくれただけでなく、尾引浩志が手のひらに入る小さな倍唱楽器「口琴」での「ホーメイ」倍音唱法なる音楽や、木造りで原始的な三味線の様相をした弦楽器を原始的な弓で弾く演奏は、まさに幻想的としか形容し得ない哀調を感じさせるものがあった。
また、飯塚直は小さな竪琴のような楽器も奏で、他にもさまざまな小さな楽器が用いて、耳を楽しませてくれた。
エアリエルと妖精たちが人の両肩の上に立って怪鳥ハーピーとなって登場する場面も圧巻であった。
前回は、プロスペローが海辺で出会った一人の女性(万里紗)から聞く話が、自分の夢の中の話か、彼女の夢の話であったのか分からない状態で始まっていたが、今回は、プロスペローがエピローグとして貝の記憶の物語のようにして語っており、始まりと終わりが前回とは異なっている。
出演者にナポリ―王アロンゾーを演じる藤木孝がいて懐かしく、嬉しく思ったが、最初見た時顔が分からなかったが、声は昔のままであった。彼ももう79歳。
他の出演者は、エアリエルに頭を丸ぞりした草光純太、プロスペローの弟アントーニオに村松武、アロンゾーの弟セバスチャンに近藤隼、忠実な顧問官ゴンザーローに深沢豊、キャリバンに武居卓、トリンキュローに細川貴司、妖精たちに万里紗と下地尚子。
前回との変容と進化(深化)と、幻想的音楽を十二分に楽しんだ。
 上演時間は、休憩なく2時間15分。

 

翻訳/松岡和子、演出・潤色・美術/串田和美
5月24日(金)14時開演、東京芸術劇場シアターイースト、チケット:5500円、全席自由席

 

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