高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   荒井良雄沙翁劇場 第23回 『ヴェニスの商人』         No. 2019-024
 

台本構成にあたっては、まず全体の時間を50分前後を考慮して、その中でその劇のどの部分を強調した構成にするかを考える一方、新地球座の限られた人的資源の中でのキャステイングも頭に入れながら台本作りをしている。
キャステイングは基本的には演出者に一任しているのだが、今回の台本作りにあたっては、シャイロックを女優の倉橋秀美にしてみることを念頭に置いてみたが、おそらくそれはないであろうと考えて構成した。
演出者でアントーニオを演じる高橋正彦は、意図して自分が省いたアントーニオの冒頭部の台詞「実際、何故かう気がふさぐか、分からない」という部分を、アントーニオの性格を演じる上で重要な台詞として付け加えた。
自分が意図して省いた、といのはこの台詞を入れる場合、次の第2場でポーシャが「わたしのこの小さい身体が、ほんとに、この大きな世界に飽き飽きしてしまったのよ」という台詞を、アントーニオとの対比の上で入れるべきだと思っていたので、全体の長さを考慮して敢えて省いた。
時間的配慮だけで省いているので、アントーニオのその部分の台詞を加えることは寧ろよいことだと賛同した。
『ヴェニスの商人』の構成は、箱選び、人肉裁判、指輪騒動という3つの大きな話題が中心となっているが、今回はその中で箱選びだけは、キャステイングの問題と時間的関係からまったく省略した。
シェイクスピア劇の1時間程度の朗読劇では、このようにカットしていく必要性から却っていろんなヴァリエーションの台本作りが可能となってくる面白さがある。
この『ヴェニスの商人』でも箱選びを中心にした台本も可能であり、また違った印象の作品となってくることは間違いない。
出演は、シャイロックに瀧本忠、アントーニオに高橋正彦、バッサーニオに久野壱弘、そしてポーシャに倉橋秀美の4人。
いつもであれば演読する出演者の表情所作を一生懸命目で追って聴いているところであるが、この日は終日体調がすぐれず、ほとんど目をつぶって聴くことだけに専念していた。
朗読終演後の挨拶で、50年の芸歴を持つ久野壱弘が、近代座の『ヴェニスの商人』の公演で始めて台詞を貰って登場した思い出と、今でのその台詞を覚えていると一部分を暗唱し、深いゆかりの作品であることを語ったのが印象的であった。

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
5月22日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(コーヒー付き)

 

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