高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   インターナショナル・シアター・ロンドン(ITCL)来日公演 
            『真夏の夜の夢』              
No. 2019-022

 開演は前触れもなく、客席から異様な声を発しながらかけてくる声、前列の客席にはその声だけしか聞こえず何事が起ったのかと思わず振り返ることから始まる。
 アマゾネスの姿をした声の一団が舞台を駈け上って、一人の男と戦って取り押さえ、その首を切り落とす。
 シーシウスがアマゾネスの女王ヒポリタを捕虜にし、彼女の指に指輪をはめて釈放し、婚礼の日を待ちわびる台詞からこの『真夏の夜の夢』の舞台が始まる。
 デミートリアスとアテネの職人ボトムを演じるサムエル・ライトがイージアスを演じて娘のハーミアを伴って登場する。シーシウスの前に登場するのはデミートリアス役がこの場ではイージアスとなっているのでライサンダーだけ、イージアスが引っ込んですぐ入れ替わりに、ライサンダーのライバル、サムがデミートリアスに変じて登場してくる。
 6人の俳優で演じるITCLの一番の見どころの一つがこの登場人物の早変わりにあり、それが楽しみの一つでもある。二役をする登場人物が同時に舞台上にいる場面ではどうするかと思っていたら、カイル・テイラーが兼ねるライサンダーとパックが同時に現れる場面、パックが眠っているライサンダーに惚れ薬を塗る場面では、ライサンダーは舞台の端、カーテンの陰に足だけを出して寝ているところをパックが舞台奥で惚れ薬を塗るという工夫を凝らしている(その足はカイルと入れ替わった人物の足であるが)。
 このほかの俳優も同じように二役以上演じ、レイチェル・ミドルがクインス(この舞台ではミセス・クインスとして女役で登場)とヘレナ、エイミー・ヒスロップがタイテーニアとヒポリタ、ダン・ワイルダーがオーベロンとシーシウス、ジェシカ・アトキンスがハーミアとフルートを演じる。
 妖精役は、レイチェル・ミドルとジェシカ・アトキンズスの二人が演じ、そのほか、シーシウスの饗宴係であるフィロストレートをカイル・テイラーが演じ、劇中劇「ピラマスとシスビー」の場面では、口上役のクインスが月の光も演じ、壁やライオンも登場させ、『真夏の夜の夢』の劇中に登場する役柄は省略されることなく全部網羅して演じられる。
 登場人物を網羅して登場させているのと同様に、場面構成も肝心な場面はほぼ網羅しているが、所作を多くすることで台詞をかなり刈り込んでいたのが特徴であった。
 出演者の身長が極端に差があって、ボトムを演じるサムは6人の中では一番背が高くがっちりとした体形で2m近い身長に見え、反対にパックやライサンダーを演じるカイルと、ハーミアを演じるジェシカの二人は150cmかそこらにしか見えず、レイチェル、エイミー、ダンはその中間の身長で、6人が並ぶと木琴の鍵盤のようにきれいに背丈順となるのが印象的であった。
 上演時間は、途中20分間の休憩を入れて、2時間20分。

 

脚色・演出/ポール・ステッピングス
5月18日(土)16時開演、学習院女子大学やわらぎホール

 

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