明治大学でのシェイクスピアの現代的魅力の授業の一環として、9年前から続いている東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)によるシェイクスピア朗読劇では、受講生は1週間前にテキストを読んでこの講座に参加、受講生は各学部にわたっており、教室はほぼ満杯の状態であった。
明治大学シェイクスピア・プロジェクト(MSP)、MSPインディーズ・シェイクスピアキャラバンの活躍、そして今年4月学内で新たに立ち上がった演劇ユニット「Willow's」など、明治大学におけるシェイクスピアの盛んな背景には、この井上准教授によるTSCを招いての授業が9年間も続いていること、その授業が受講生に人気のあることからも伺われる気がした。
『ジュリアス・シーザー』は、自分にとっても学生の時ゼミで初めて読んだシェイクスピアの作品で、今でも新鮮な記憶が残っていて懐かしい気持でいっぱいであるが、その一方で明治大学の学生を羨ましく感じた。
シェイクスピアの作品は戯曲であり、読むというより、観るもの、聴くものであり、それを授業でプロの俳優たちによる朗読で聴くことが出来るというのは何と恵まれていることか。
TSC公演でのシェイクスピア公演はすべて主宰者の江戸馨の翻訳で、今回もこのために新たに翻訳されたもので朗読されている。
朗読は、1コマの授業時間である90分で、<1幕2場 ルパカルの祭>、<2幕2場 3月15日の早朝 シーザーの屋敷>、<3幕2場 シーザー暗殺をめぐる2つの演説>、<3幕3場 ローマの街中>、<4幕3場 サルディス付近のブルータスのテント>と題した5つの場面を抽出して行われた。
全体の解説と各場面における状況の懇切丁寧で分かりやすい説明が江戸馨の朗読劇の特徴であるが、授業の一環でもあるということでより一層分かりやすく、興味を惹きつける内容の解説となっていた。
朗読の丁度半ばの場面である3幕2場のシーザー暗殺をめぐるブルータスとアントニーの二人の演説の場面では、市民の台詞を、予め選んでいた4人の学生たちがその場で台本を渡され、それぞれ台詞を読み上げるという授業ならではの企画が盛り込まれており、一方通行ではないところに適度な緊張感を持ち込んで、飽きさせないように工夫されていたのも一興であった。
ブルータスの演説とアントニーの演説は、作品全体を通しても一番の見どころ、聴きどころであるが、何より感心したのは、その場で渡された台本を4人の学生がだれ一人台詞を噛むこともなく、しかも堂々と台詞らしく発声していたことであった。
出演者は、シーザーと他を紺野相龍、ブルータスやアントニー他を丹下一、カルパーニア、キャスカ他をつかさまり、占い師、召使い他と解説を江戸馨、そしてリュート演奏を佐藤圭一。
それぞれ複数の役をうまく演じ分ける朗読は聴きごたえのあるものであったが、なかでも丹下一のシーザー追悼のアントニーの演説は迫力満点、圧巻であった。
非公開の授業ではあるが、快く参加を受け入れてくれた井上准教授、そしてTSCの江戸馨さんに感謝。
訳・構成・演出/江戸 馨、作曲・リュート演奏/佐藤圭一
5月17日(金)17時10分より、明治大学泉台キャンパス第1校舎001教室
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