高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   SAYNK第9回日英語朗読劇公演 『リア王』             No. 2019-020
 

レクチャーの中で、瀬沼達也は新約聖書の『ルカ伝』15章にある「放蕩息子」のたとえを恩師の翻訳で思いを込めて朗読し、『リア王』のグロースターと二人の息子エドガーとエドマンドとの関係とを結びつけ、リア王と3人の娘とは「放蕩息子」の逆バージョンであるという見解を披露した。
関東学院大学でシェイクスピア公開講座の講師を務めるかたわら、同大学での文化研究所の客員研究員としてシェイクスピア劇の背景にあるキリスト教との関係について研究している瀬沼氏ならではのレクチャーで興味深い指摘であった。
10年間でシェイクスピアの全戯曲の上演を目指す「シェイクスピアを愛する愉快な仲間たちの会(SAYNK)」の公演も今回で9回目を迎え、全作の4分の1となったことを進行役でナレーション役の佐々木隆行から紹介があった。
瀬沼が目指すこの朗読劇は、普通の朗読劇というより台本を持っての立稽古に近いもので演じる朗読劇ということで、私はこの形式の朗読劇を「演読劇」と称している。
『リア王』は全部で3200行を超えるが、この朗読劇では1497行と半分以下にしているが、それでも朗読時間は2時間に及んだ。
SAYNKの主宰者である瀬沼が、500行を超える量の台詞を語るリア王とエドガー役の一部を担当して一人で全体の4割以上となる630行を超える台詞を演じ、いつものことながらその台詞力の抜群さを堪能させてくれ、文字通りの熱演で、その心地よい演読に目をつぶって聴いていると、あまりの心地よさにたびたび寝入ってしまう程であった。
台詞量でも分かるように全体の構成はリアを中心にしたもので、副筋としてのグロースターの出番はわずかしかなくその印象も薄かった。
英語の台詞の発声の美しさで期待の女性陣は、ゴネリルを飯田綾乃、リーガンを関谷啓子、コーデリアを小嶋しのぶが演じて期待通り耳を楽しませてくれ、上智大学の井上寛斗がエドマンドやケントなど演じ、また、日本語で道化を演じた増留俊樹の演技は秀逸で、彼の本領発揮の演技を堪能させてもらった。
今回も全員揃っての稽古はほとんど出来なかったということであるが、個々のメンバーの台詞力がそれを補って余りあるものがあった。
最後の5幕3場では予定の時間をオーバーしていたが、手を抜くことなく進められ、最後の台詞'The weight of this sad time we must obey'は最後のエドガーを務めた関谷啓子が、静かに語り終えた。
特筆すべき点では、飯田綾乃がゴネリル役を演じる一方、効果音としての音響を担当して、この朗読劇、演読劇に大いなる効果を盛り上げていることを挙げねばならない。
また、佐々木隆行の劇の進行における各場面の概況のナレーションの日本語も聞き取りやすく、解りやすく、適格であるのも、この朗読劇を楽しむのに大いに寄与していた。


レクチャー講師・演出/瀬沼達也、使用テキスト/大修館シェイクスピア双書『リア王』
共催/シェイクスピアを愛する愉快な仲間(SAYNK)・横浜山手読書会
5月12日(日)14時開演、神奈川近代文学館・ホール

 

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