高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   劇団現代古典主義版マクベス 『THE MACBETHS』       No. 2019-016

 タイトルの『マクベス』が英語表現で複数形となっている。
 マクベスが複数で登場するのではなくマクベス一族の意味で使われており、この劇ではマクベス夫妻だけでなく原作にはない娘と息子が登場する。
 開幕の場面は混沌としていて全体の状況がつかみにくいが、展開に従って少しずつ原作との関係(違い)が見えてきて、最後になると当初のカオスの状況の疑問が消えるが、台詞の一部になおも疑問が残り、そのまま終わる。
 冒頭場面の混沌の中で、マクベスの長女イシュラが母親のマクベス夫人に虐待のうえ殺され、彼女はマクベスを迎える3人の魔女の中の一人に変じるが、魔女でありつつもよそ者的な存在でしかない。
 登場人物は、マクベス夫妻とその子供と魔女たちのほか、ダンカン王、バンクオー、マクダフ、それにマクベスの従者の合計10名。
 原作との違いは、マクベス夫人が息子のイアンを王位につけようとマクベスを殺す計画をするが、娘のイシュラが夫人に殺されたことを知ったマクベスに逆に殺されてしまう。
 夫人を殺した現場を従者に見られたマクベスは、夫人が自害したと言ってTomorrow speechの台詞を語る。
 バーナムの森が攻めてくるという従者の報告に腹を立てたマクベスはその従者を殺してしまう。
 マクダフとの一騎打ちでは、マクダフは「女の股から生まれてはいない」という台詞はなく、マクベスに殺されてしまうのも原作と全く異なる。
 女の股から生まれていなかったのは自分の息子のイアンであったが、そのことを知ったマクベスはなぜかイアンをバンクオーの子として(思い込み)殺そうとするのだが、魔女となっている娘のイシュラに遮られる。
 マクベスの最後は、マクダフを倒した後、攻めてくるマルカムに殺されるのを予兆させるところで終わる。
 台詞の一部の疑問というのは、マクベスがイアンをバンクオーの息子と言う場面が中途半端な状況下であるため、劇中、別の場面でバンクオーの息子はマルカムに保護されているというマクダフの台詞があって、どこまで意図された台詞であるのか、自分にとっての疑問として残された。
 史実としてのマクベスは、マクベス夫人の連れ子がマクベスの死後ほんの一時期ではあるが王となるだけに、二重三重に含みを感じさせられた。
 『マクベス』を知っている者にとっては、その原作との違いを探るという楽しみのある作品で、そこに緊張感を感じながら見入った。
 登場人物とキャステイングは、マクベスに大西輝卓、バンクオーに樽谷佳典、ダンカン王に柏木公宰、マクベス夫人に藤井絵里、マクダフに諏訪貴大、イシュラに田畑恵未、ほか。
 この劇団は、3つの特色である、
(1)古典を分かりやすく、短く、しかもオリジナルを改変した創作劇
(2)一つの場面に他の場面が同時に展開されるという「同時進響劇」
(3)すべての作品を70分間で上演する
というスタイルを貫いている。

 

原作/W. シェイクスピア、作・演出/夏目桐利
4月14日(日)14時30分開演、劇団現代古典主義アトリエにて。チケット:3500円

 

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