高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   新地球座主催・荒井良雄娑翁劇場 第22回
            『ハムレット』 ―クローディアス篇―     
No. 2019-012

 このシリーズで『ハムレット』の朗読劇は3度目となるが、その都度出演者の人数などの都合でハムレットの登場しない『ハムレット』やハムレットの一人芝居という形式をとってきて、今回も演出者の発案で「クローディアス篇」としてハムレットの登場しない3人で演じる『ハムレット』となった。
 登場人物は、国王クローディアス(高橋正彦)、王妃ガーツルード(倉橋秀美)、侍従長ポローニヤスと結びの役としてホレーショー(久野壱弘)の4人、場面転換における笙演奏を東儀雅楽子。
 エピローグにホレーショーとなっているが、台本では実はフォーティンブラスの最後の台詞で締めることになっていたが演出者の考えで、ハムレットの末期の台詞「おお、余は空寂!」を加え、ホレーショーの「抜群の御心も今こそ砕けたれ!ハムレットさま、おさらばでござります。天使の歌に送られて安養世界へ登らせたまへ」の台詞に替えられた。
 ここでちょっとしたミスがあり、久野は「余は空寂」とあるところ「ヨワスイジャク」と発してしまった。台本変更を知らなかった自分は、最初のこの「スイジャク」に「?」と思ったのだがすぐにハムレットの最後の台詞'the rest is silence'だと気づき、続くホレーショーの台詞は、締めの言葉として自分の台本よりむしろ良いと思われた。
 この「ヨワスイジャク」に対して「世は衰弱」として面白く解釈された観客の方もいて、失敗も愛敬であった。
 もう一つ、愛敬の失敗例として、ポローニヤスがハムレットに殺される場面で、高橋のキュー(台詞のきっかけ)を勘違いした久野が早まって呻き声をあげてしまったのだが、ガーツルード役の倉橋秀美はそれを花粉症によるくしゃみと思ったという事であった。
 倉橋秀美の勘違いにあったように、この日、出演者全員が花粉症に悩まされながらの朗読であった。
 東儀雅楽子さんの笙演奏が場面転換のメリハリに効果的でよかった。

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
3月27日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン、料金:1000円(ドリンク付き)

 

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