最低、最悪であった。
期待が大きかっただけにその落差も大きい。
舞台後方に一人だけ椅子にうずくまるようにして座っている黒い衣装の女性だけ残して、出演者6人が舞台前方に出てきて漫才風にマエセツで、「こつこつプロジェクト」についての説明などとともに、エドワード王をコンビニのオーナー、侍従長を店長になぞらえて二人の関係を語る場面があって、もしかしてそのようにアレンジされた劇になるのかと思ったが、さにあらずであった。
赤い衣装のもう一人の女性出演者がマエセツを突然切り上げる合図をして全員後方に引っ込むと、椅子に座った女性がそのままの姿勢で、リチャードの冒頭の独白の台詞を語り始めるが、この日本語が滅茶苦茶で、台詞回しも聞くに堪えないものだった。
クラレンスがロンドン塔に送られていく場面では赤い衣装の女性がリチャード役となり、黒い衣装の女性と二人でリチャードの台詞を語る。
1幕2場の、リチャードがアンを口説く場面では赤い衣装の女性がリチャード役、アンは男優が演じ、リチャードは女言葉、アンは言い回しこそ女性風だが、言葉の端々は男言葉で、二人の会話は機関銃のような早口台詞。
アンを演じた男優が二人の女性のリチャード役とともにリチャード役になり、3人のリチャード合唱となる。
エリザベスとリチャードとの言葉のバトル場面でエリザベスを演じたのは、今回の出演者の中で唯一名前と顔を知っているチョウヨンホ。この1幕3場ではマーガレットの登場場面は省略されていた。
1幕4場では、クラレンス殺害の暗殺者たちはリチャードを演じた二人の女性が演じ、その言葉使いは今どきの女子高生の会話で、これもまた聞くに堪えないおしゃべりだった。
2幕1場、王エドワードが間に入ってエリザベスやリヴァーズ卿らと反目するヘイスティングズ卿、バッキンガム公、そしてリチャードとの和解の場面が終わって、インタバルとして再び解説めいたおしゃべり。
今回のリーディングでは最初のマエセツで説明があったように、3幕4場のヘイスティングズ卿の処刑の場面で終わり。
リーディング公演というより質の悪い漫才公演のような朗読劇で、台詞も耳障りで終演後もしばらくの間耳鳴りを感じるほどのノイズであった。
出演者は全員、第1期生の三原玄也をはじめ新国立劇場演劇研修所の修了生で、女優陣は岡崎さつきと川澄透子、男優陣は三原玄也とチョウヨンホのほか、野口俊丞、林田航平、村岡哲至。
何とも後味の悪い朗読劇であった。
上演時間は、休憩なしで1時間20分。
松岡和子による翻訳、構成・演出/西 悟志
3月17日(日)18時開演、新国立劇場・小劇場、チケット:(シニア)2052円、座席:C4列3番
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