高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   TSC公演 『喜劇❤ロミオとジュリエット』           No. 2019-008
 

2012年2月に初演した『無限遠点』を、『喜劇❤ロミオとジュリエット』と改題して7年ぶりの再演。
最初この『無限遠点』というタイトルを目にしたとき、その意味を調べて見ると、「平面上の2本の平行線は無限に遠いところにある1つの点で交わること」とあって、象徴的で「鏡の向こうのシェイクスピア」シリーズにふさわしいタイトルだと思っていたが、タイトルが変わっただけで幽遠なイメージがガラリと趣が変わって感じられた。
出演者9名のうち初演に出演したのはそのうちの3名で、残り6名は入れ替わっており、初演と同じ役を演じたのはヒロインのジュリエット役のつかさまり、ロレンス神父役の原本太仁、前回悪魔1とキャピレットを演じた大久保洋太郎は今回ロミオの役。
TSC(東京シェイクスピア・カンパニー)は劇団ではないので公演ごとに出演者を募っているが、劇団員と言ってもいい常連の出演者に加えて新たに参加するメンバーの人選にいつも感心させられ、そのキャステイングが楽しみの一つでもある。
大筋のストーリーは覚えているつもりでも、結構新鮮な感覚で次がどうなるだろうというわくわく感があって、劇の展開にスリルを感じながら今回も観劇した。
前回の観劇日記の繰り返しになるがその展開を振り返ってみると、悪魔との契約でロミオとジュリエットは死んでいなかったことになり、ロレンス神父はそこから長い眠りに陥ったようになるが、彼はジパングをはじめ東宝の国々への布教のたびに出て戻ってきたばかりのところから始まる。
ロミオとジュリエットの間にはロザラインという一人娘がいて、彼女は大公の遠縁にあたるマルコとの結婚話が進められているが、彼の軽薄な性格に結婚に乗り気でない。
ジュリエットは自殺未遂から目覚めた後、一種の夢遊病状態になり、ロミオにはまったく関心を示さないのに、他の男性に対しては老若美醜を問わず、『夏の夜の夢』に出てくる恋の媚薬を目に落とされたかのように、目にする男性の誰にもたちまち恋に陥ってしまう。
ジュリエットの両親が亡くなった後長らく途絶えていたキャピュレット家の後継ぎとしてコジモ・デ・キャピュレットとその息子エドマンドが移り住んで来てモンタギュー家に挨拶にやって来る。
ジュリエットはコジモにたちまち恋するが、エドマンドを見てすぐに彼に恋するようになり、バルコニー・シーンがこのエドマンドとの間で演じられることになる。
一方ジュリエットの娘ロザラインもエドマンドに一目惚れする。
ジュリエットの娘に対する冷ややかな態度はシンデレラとその継母の関係を感じさせるところがあるが、マルコとの結婚に関してはロザラインの味方であったのが、エドマンドとの三角関係で豹変し、マルコとの結婚を勧めるようになり、結婚式も急に日取りが決められる。
窮したロザラインはロレンス神父に相談し、原『ロミオとジュリエット』のストーリーが繰り替えされることになるが、ここではジュリエットとロザライン二人が同じように薬を飲むようになる。
しかし、ロザラインが渡された薬は恋から目覚める薬で、目覚めた後はエドマンドへの恋は消え失せる。
ジュリエットが飲んだ薬はかつての薬と同じで、周囲は彼女が亡くなったものと嘆き悲しむが、ロミオはそれを疑ってひとり彼女のかたわらにいて目覚めるのを待っており、恋狂い、色情狂のジュリエットを殺そうとしているが殺しかねていて、彼女が目覚めると逆に自分を殺してくれと迫る。
ジュリエットはためらわず殺そうと短剣を振りかざすが、一瞬止まったところで長い眠りから覚めたように現実を見つめ、老いて醜くなったロミオに繰り返し、その言葉を吐き続けるが、やっと二人の心は和合する。
この騒動の最中、キャピュレット家が火事で全焼する。
実は、このキャピュレット家の二人は、ロレンス神父と契約を交わしていた悪魔であり、モンタギュー家にも侍女として悪魔が入り込んでいて、彼らが事態を操っていたのであるが、その目論見は失敗に帰したようである。
悪魔たちは「地獄も今日ではせちがらくなって、むしろこの世の方がよほど地獄よりひどくなっている」と嘆息し、次の仕事に取り掛かることにする。
次の仕事の候補者をリストで探すときマクベスの名が出てくるが、悪魔が「これはもう済んだ」(「鏡の向こうのシェイクスピア」シリーズで上演済み)と言って、次にオセローの名が候補に挙がるので、ひょっとしたら近い将来『オセロー』が「鏡の向こうのシェイクスピア」シリーズとしていずれ現れるかも。
出演は、ロミオ、ジュリエット、ロレンス神父役以外では、悪魔1とキャピュレットに少年王者館の井村昴、悪魔2とエドマンドに遊佐明史、悪魔3と侍女にしんばなつえ、ロザラインに流山児★事務所の山丸莉菜、乳母リコリダに三村伸子、マルコに山本悠貴。
喜劇というより一種の風刺劇、ダンテの『新曲』に通じる「コメディ」を感じさせるストーリーの面白さと、出演者のキャラクターがにじみ出る演技に心温まるものを感じ、久しぶりの再演を満喫させてもらった。
上演時間は、休憩なしで2時間5分。

TSCは来年30周年を迎えることになり、2020年12月には、今回出演しているつかさまりと大久保洋太郎主演で『冬物語』の公演が予定されており、今から待ち遠しい。

 

作/奥泉 光、演出/江戸 馨、作曲・演奏/佐藤圭一 2月21日(木)、
下北沢・「劇」小劇場、料金:4000円、全席自由席

 

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