高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   第13回横浜山手芸術祭参加・TSC朗読劇 『帝国をかけた愛』     No. 2019-004
 

クレオパトラが王座について王座を追われた少女期からその死までを、ローマの英雄シーザーとアントニーの二人との関係を通して紡ぎあげて大ロマンス劇に仕上げた江戸馨の構成が素晴らしく、壮大な物語を興味深く、かつ楽しく聴くことが出来た。
第一部はバーナード・ショーの『シーザーとクレオパトラ』による少女時代のクレオパトラとシーザーの出会いの場面から始められる。
少女時代のクレオパトラを演じるのは、TSCの看板女優つかさまり、初老のシーザーを演じるのは丹下一。
七色の声を持つつかさまりの初々しさを醸し出す少女クレオパトラの声色に、シーザーならずとも惹き込まれていく。
第二部、シェイクスピアの『ジュリアス・シーザー』から、丹下一演じるアントニーの追悼演説は圧巻としか表現しようがない程で、観客である我々までもが聴衆の一人になった気分に高揚させられた。
この場面では、他の二人の出演者が市民を演じるだけでなく、予め観客の中から選ばれていたサクラが同じく市民としてアントニーの演説に呼応して台詞を発する役をするが、それがこの場面を立体感のあるものにして臨場感を大いに高めて非常に効果的であった。
第三部は『アントニーとクレオパトラ』のアクティウムの海戦の場面からアントニーの自殺の場面までを、つかさまりがクレオパトラとマーディアン、オクテビアスを演じ、丹下一がアントニー、そして今回TSC初参加の遊佐明史がサイディアスとダイオミディーズ、江戸馨がフタタティーダとイアロスを演じた。
つかさまりと丹下一の朗読術、台詞力の凄さと魅力は言うまでもないが、演出者江戸馨がこの3つの物語の概要を、映画「クレオパトラ」のエリザベス・テーラーとリチャード・バートンにまつわるエピソードや、クレオパトラに関する史実を交えながら、それぞれの始まりに当たって背景を分かりやすく説明をすることで、聴く前から興味がそそられてくる、その話術の魅力も聞きどころの一つであった。
さらに、江戸馨はTSC公演にあたってはすべて自分の翻訳で上演することを旨としているが、その翻訳も耳に優しく魅力的であるのも特徴である。
この壮大なスケールの物語を、全体で1時間30分にまとめ上げ、しかもハイライト部分を余すところなく伝え、大いに楽しませてもらったとともに、シェイクスピア劇が台詞劇で「聴く劇」であることを実感として体感させられる至福の時間を楽しんだ。
最後になったが、TSC公演には欠かせない佐藤圭一のリュート演奏もこのカンパニーの特徴の一つで、いつもながら心を和ませてくれた。感謝!感謝!!

 

使用テキスト/W.シェイクスピア作 『ジュリアス・シーザー』『アントニーとクレオパトラ』
B.ショー作 『シーザーとクレオパトラ』
訳・構成・演出・解説/江戸 馨、作曲・演奏/佐藤圭一
1月26日(土)14時開演、横浜市イギリス館、料金:2000円(茶菓付き)


>> 目次へ