高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   荒井良雄沙翁劇場 第21回 『お気に召すまま』           No. 2019-003
 

2019年、最初の「荒井良雄沙翁劇場」。
今回は、3名の出演者で登場人物が6人という台本構成にしており、ヒロインのロザリンド以外は複数の役をすることになっており、そのような構成自体は初めてのことではないが、今回その複数役に関して2つの工夫がなされていたのが注目された。
一つは、始まりに当たってヒロインのロザリンドを演じる倉橋秀美が前口上としてキャストの紹介をし、それぞれの役を演じる俳優が、登場人物が紹介されるごとに衣装を着替えてその人物がどの登場人物であるか分かるようにした工夫と、もう一つは、本番中、役柄変更の衣裳着替えに当たって、今回初出演のゲスト、大河原崇子がピアノ演奏を入れることで間を取ったことであった。
登場人物の衣裳にも工夫が凝らされ、特にロザリンドはこの台本では男装から始まるが、最後の場面では花嫁姿の女性の姿に着替えて登場するという凝った念の入れようであった。
その結びの大円団では4組の結婚式がなされることになるのだが、出演者の数と女性一人という構成から、ヒロインとヒーローの一組の結婚式だけで全体を表さざるを得ない。
そのように登場人物を限定せざるを得ない中で、この劇中のハイライトの一つであるジェイクィーズの「世界は舞台、人はみな役者」の場面は欠かせないだろうし、喜劇的要素としての道化タッチストーンも残したい、また、ストーリーの展開のふくらみを持たせるために、オーランドーの兄オリヴァーと前公爵という登場人物を残して台本構成した。
それらの役を演じたのは、ロザリンドに倉橋秀美、オーランドーとタッチストーンに久野壱弘、前公爵とジェイクィーズとオリヴァーを高橋正彦であった。
朗読劇であるから、演じる役柄と役者の年齢をそれほど気にする必要もないだろうが、久野壱弘のタッチストーンがはまり役であることは言うまでもないことであるが、若い恋人役オーランドーの役をしても違和感が少なかったのは、台詞が逍遥訳であるという点にあるとつくづく感じさせられた。
そこが逍遥訳を聴く楽しみの一つでもある。
朗読劇と言いながら、いつもながらの演技所作、人物設定にあった衣装の着替えなど、朗読劇を超えたものがあり、自分としてはこれを、「演じながら読む」劇として「演読劇」として呼称したい。
4組の結婚式―この演読劇では舞台上1組の結婚式―の後、最後の結びにロザリンドのエピローグがあるのだが(台本にも入れていた)、今回そのエピローグに代えてゲストの大河原崇子のピアノ演奏という粋な演出で、最後を盛り上げ、新年にふさわしい公演であった。
また、参加者もゲストの大河原さんのお声がかりで大勢の方が初参加され、出演者含めて総勢30名を超える賑わいで店内は満席であった。
新地球座の財産は、このような広い交友関係によって新たな参加者があるということも一つであるが、ほとんど毎回欠かさず参加してくれている方々から支えられているということもあらためて実感した。

 

翻訳/坪内逍遥、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
1月23日(水)18時30分開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン


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