舞台は、長方形の平土間を客席がコの字型に囲む形で収容人員は50名程度かと思われるが、この日は、いわゆる業界の人をはじめとした招待客の客席が多く見受けられた。
開演前、数名の出演者が黒の衣装で黒の仮面を付け、舞台上で大きな白い紙を手でちぎっては、人物像や楽器のようなものを作って床の上に無造作に置いている。
開幕と同時に、アントーニオを先頭にして、先ほどの黒装束の一団が猟犬のような所作と唸り声をあげながら登場し、舞台中央まで来ると、アントーニオが座席のないパイプ椅子に腰を下ろし、「まったく、どうしてこう気が滅入るのかな」という台詞を語り始める。
チラシの出演者の数から、今回も一人複数の役を兼ねるであろうことは想像していたが、当日もらったプログラムのキャスティングを見ると、複数役のみならず、原作とは異なった人物名まで登場させていて、モロッコ大公がオセローをもじった「オセロス大公」と名前が変えられ、演じるのはシャイロックとサレーリオを演じる河内大和。
ポーシャを演じる真以美は、ソラーニオとジェシカも演じ、ポーシャとジェシカが同時に出演する場面が何度かあるが、最後の場面では原作と異なった工夫を凝らしていた。
意表を突くキャスティングは、老齢のデヴィッド・ジョン・テイラーが演じるネリッサ。しかも、台詞は裁判の書記役を演じる時を除いてすべて英語で通したが、違和感もなく聴くことが出来た。
最後の場面、ジェシカは恋人ロレンゾーによってゲットーの外の広い様子を知ったことで、更に自由を求めて書置きを残してロレンゾーの元を去って行き、ジェシカとロレンゾーの星空を眺めての台詞はポーシャが語る。
ポーシャからシャイロックから残される遺産のことを聞いて、ロレンゾーは「ジェシカは・・・」と言いかけるが、ポーシャは直ぐに話を打ち切って話題が転じられる。
終幕は指輪騒動も収まって、アントーニオを残して全員が立ち去るところでストップモーションとなり、瞬時の沈黙。やがて河内大和のシャイロックが踊るような所作でアントーニオの前に現われ、シャイロックにつられてアントーニオも踊り始め、ストップモーションで止まっていたポーシャらの一団も加わっての踊りとなって幕となる。
出演は、他にバサーニオ役他で石毛翔弥、アントーニオやランスロット他に白倉裕二、ロレンゾーやヴェニスの大公に岩崎MARK雄大、他、総勢11名。
上演時間は、途中休憩10分をはさんで2時間30分。
終演後、翻訳者の松岡和子先生のアフタートークがあったが、残念ながら体調不良で聞かずに帰った。
翻訳/松岡和子、演出/木村龍之介
11月29日(木)14時開演、原宿VACANT(バカント)
チケット:(一般自由席)4200円+ドリンク代600円(必須)
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