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  新地球座主催・荒井良雄娑翁劇場 第19回
                  『真夏の夜の夢』(村人篇)     
No. 2018-050

 第一部の出演者、尾崎廣子さんのお友達仲間がグループで5、6名来られたのをはじめ、多くの人の参加があり、狭い会場は超満員の盛況であった。
 いつものように、第一部は日英語朗読で、倉橋秀美、高木、久野壱弘の3人によるシェイクスピアのソネット朗読(逍遥訳、英語、高木訳の順)、尾崎廣子の辻邦生作『十二の肖像画による十二の物語―「謀(たくら)み」―』の朗読の後、第二部、逍遥訳沙翁朗読劇場では、『真夏の夜の夢』(村人篇)の朗読劇。
 『真夏の夜の夢』は、前回7月の「恋人篇」のバージョンに続いて、アテネの職人たちを中心にした「村人篇」としての構成で、登場人物は、アテネの職人たちの外には、シーシヤス公爵とヒポリタ、及び妖精の王オービロンとチテーニヤとなっている。
 朗読劇とは言いながら、アテネの職人たちを演じる出演者たちの衣装は勿論であるが、職人たちの雰囲気を持たせるような靴を履いていて、その細やかな心配りに改めて感心させられた。
 そのアテネの職人たちを演じた出演者のアンサンブルがとてもよく、面白く、楽しかったが、職人たちをたばねるリーダー格のクインス役を白井真木、水を得た魚のようにボットムを演じた久野壱弘、他の出演者の台詞の間に合いの手の頷きの声をうまく発するフルート役の倉橋秀美の目の動きの可愛らしさ、そして今回役者として初登場のスナウト役の尼理愛子(琵琶演奏者である彼もしくは彼女は、かつては大衆演技の役者でもあった)が、アンサンブルのバリエーションに色を添えていた。
 シーシヤスとオービロン、ヒポリタとチテーニヤは一人二役で、高橋正彦と森秋子がそれぞれ演じた。
 台本構成者として、台本を見ながら劇の進行をいつも見ているが、今回、とくに感心し、参考になったのは、冒頭のシーシヤスとヒポリタ登場の前に、アテネの職人たちを登場させ、彼らが公爵の結婚式の日に劇を披露しようと話し合っている場面で、この台本での最後の部分であるシーシヤスの台詞、「その芝居を視よう。 率直な忠実な心が提供してくれるものならどんな物でも結構だ」という場面を挿入した、演出での再構成であった。
 出演者の台詞の補いや削除など、台本構成の上で勉強させられる面がいつも多々ある中で、今回の再構成は非常に参考になっただけでなく、教えられることが多かった。


翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
9月19日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン

 

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