高木登 観劇日記トップページへ
 
  タイプス・プロデュース第94回公演
                  嶋田有佑主演 『ハムレット』    
No. 2018-048

 途中休憩10分を含めて1時間50分という短い上演時間で、拍子抜けするほど台詞や場面のカットが多い演出で、しかも全体的に出演者の演技力、台詞力が乏しく、中身の薄い舞台でしかなかった。
 フランスに旅立つレアティーズに送るポローニアスの教訓の台詞のカットに始まり、ハムレットの'To be, or not to be'の台詞もなく、オフィーリアの埋葬場面もなく、従って墓掘り人の登場場面もなく、カットに次ぐカットで、ハムレットとレアティーズの剣の試合は前触れもなく始められ、唐突な感じであった。
 ないないづくしにさらに加えれば、ハムレット王亡霊出現の後、ハムレットがホレイショーやバナードーらに誓わせる場面で亡霊の「誓え~」の声もなく、オフィーリアの狂気の場面ではクローディアスやガートルードに花を贈る場面もなく、ただ歌って走り回って動くだけで哀れさを感じさせるものが何もなかった。
 しかしながら、演出の工夫として見るべきところとしては、開演直後の愛MEGUによるダンスを舞台下手側奥からガートルードが見守っていることから、そのダンスがオフィーリアの狂気を予兆させることを感じさせたことと、休憩後の直後、今度はクローディアスが、ハムレットの狂気を表象するかのような千KAZUのからくり人形の機械仕掛けのような振付のダンスを舞台上手奥で眺めていたこと、そしてハムレット最後の場面にフォーティンブラスが登場する代わりに、愛と千二人のダンサーのダンスで締め括られる点であった。
 ダンサー2人を加えて総勢13人の出演者は多いとは言えないまでも少なすぎるとも言えないが、それほど大きくもない舞台が何か閑散として感じられ、タイプスのこれまでの熱気が感じられなかった。
 出演は、ハムレットに嶋田有佑、クローディアスとハムレットの亡霊に新本一真、ポローニアスに秋元剛、ガートルードに君島久子、レアティーズに砂押正輝、オフィーリアに東里奈など。


翻訳/小田島雄志、台本構成・演出/パク・バンイル
9月11日(火)14時開演、座・高円寺2、公開ゲネプロ、全席自由

 

>> 目次へ