高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   Kawai Project Vol. 5 『お気に召すまま』          No. 2018-047
 

ステージは平土間の張り出し形式で、客席はコの字型に舞台を囲んでいる。
自分の予約席E列13番は、舞台正面の最前列で上手寄りの席。
開演と共に、オペラ歌手でもある声楽家・俳優のLutherヒロシ市村が最初に登場し、「この世はすべて舞台、男も女もみな役者にすぎぬ。退場があって、登場があって、一人が出番のいろいろな役を演じる」というジェイクィズの台詞を歌詞にして歌うところから始まり、続いてその他の登場人物が登場して一緒にその歌詞を唱和する。
演出の河合祥一郎はプログラムのミニ解説でシェイクスピア時代の人文主義思想では、人は愚かであり、愚かしさこそ人間らしさであり、道化はそれを体現するものであると書いている。
恋こそは、人の犯す最も愚かな行為の一つであり、この舞台はその恋をする愚かしさを愛すものとなっていて、最後に4組のカップルで大円団を迎える。
人はみな役を演ずる役者であることを表象するかのように、複数の役を演じる出演者が幾人かいて、その変化を楽しむことが出来る。
老僕アダムと羊飼いコリンを演じ、最後にはハイメンをも演じる小田豊、前公爵ファーディナンドとその弟フレデリック公爵を鳥山昌克、お抱えレスラーチャールズと森の貴族、田舎者のウィリアムを演じる峰崎亮介、そして道化タッチストーンとジェイクィズを演じる釆澤靖紀など。
釆澤靖紀の二役は特に見もので、声色の変化や衣装の違いで最初はその二役に全く気が付かないほどであるばかりでなく、この二人が同時に登場する場面では、道化のタッチストーンがジェイクィズの衣装を着た替え玉の台詞を言う場面などは思わず笑わせてくれる面白さであった。
追放された前公爵に従ってついて来た他の貴族たちが一様に森にふさわしい衣装であるのに対し、ひとりこのジェイムズのみが宮廷服のままであるのは、人に同調しない彼のつむじ曲がりを象徴しているかのようであった。
エイミアンズを演じる市村の劇中歌だけでなく、シーリアを演じる山崎薫が途中で小姓役となって歌う場面も彼女の歌唱力を存分に楽しませてもらった。
太田緑ロランスが演じるヒロインのロザリンドはもちろん素敵であったが、このシーリアを演じた山崎薫の演技が何とも言えず素晴らしく愛らしかった。
演技とは全く関係ないが、長男オリヴァーを演じる玲央バルトナーと三男オーランドを演じる玉置玲奈の苗字と名前が「玲奈」と重なっているのが面白いと思った。
テンポがよく、はじけるような楽しい舞台で、上演時間は、途中15分間の休憩を挟んで、2時間45分。


新訳・演出/河合祥一郎、美術・衣装/小池れい
9月7日(金)13時30分開演、三軒茶屋・シアタートラム
チケット:4000円、座席:E列13番

 

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