●『シェイクスピアのソネット』
14日(土)と15日(日)の公演のうち、15日のみ13時から番外編としてシェイクスピアのソネットのリーディングがあり、第1楽章「結婚のすすめ」、第2楽章「旅路にて」、第3章「ダークレディ」、そしてエピローグとして「愛の温泉」と題してソネット154篇の中から32篇を選び出して、遠藤栄蔵が40分近くかけてひとりで朗読。
『恋の骨折り損』にはいくつものソネットが出て来ることもあっての試みであったが、小田島訳にこだわり、こよなく愛している気持が伝わって来る温かみを感じる朗読であった。
エピローグを含めての4部構成でそれぞれの楽章で選ばれたソネットは、各篇切れ目なく連続的に朗読され、ひとつの物語を構成しているようで楽章のタイトルにふさわしい内容であった。
●『恋の骨折り損』
シェイクスピア全作品を上演した板橋演劇センターでは、『恋の骨折り損』は16年前の2002年1月に、シェイクスピアの16番目の作品として初演され、今回が2度目となり、配役は当時と全部入れ替わっているという。
今回の出演者は20歳から90歳までという幅のある年齢構成で、総勢15名。
板橋演劇センターの舞台を観る楽しみの一つに、長年この舞台に立ってきて、毎回今回が最後になるかも知れないと言いつつも出演が続いているお馴染みの俳優を含め老優たちが元気に出演し続けているのを見ることが出来ることと、新たにフレッシュな若い人の参加があることである。
粘液質的な台詞回しで一種独特な存在感を示す教師ホロファニーズを演じた森奈美守、神父ナサニエルを演じた加藤敏雄、ボイエット卿を演じた村上寿などお馴染みの俳優と、マーケードを演じた神本十兵衛など、高齢者の技巧を超えた演技や台詞が年齢を重ねた味わいを楽しませてくれた。
板橋演劇センターのシェイクスピア劇のもう一つの魅力は原作に忠実な遠藤栄蔵の演出にある。
今回は出演者の数の問題もあってか、ナヴァール側の貴族デュメーンとフランス側の淑女キャサリンの登場がなかったが、ナヴァール王と貴族たちとフランスの王女と淑女たちの恋の駆け引き、騎士アーマードーと小姓のモス、警吏ダル、田舎者のコスタード、田舎娘のジャケネッタ、それに神父ナサニエルと教師ホロファニーズなどの登場するそれぞれの場面が全体の構成の中にしっかりと組み込まれていて、それぞれの場面を楽しむことが出来た。
アーマードー役を務める演出者でもある遠藤栄蔵の演技は全体の雰囲気を包み込む温かな包容力があり、小姓モスを演じる山田真央がアーマードーと丁々発止と元気溌剌に台詞を交わす場面などにさわやかさを感じた。
この舞台の見どころ、聞きどころでもあるビローン卿とロザライン嬢、ロンガヴィル卿とマライヤ嬢はそれぞれ古谷一郎、鎌博子、深澤誠、末續理紗が演じ、なかでも古谷の台詞は聞きごたえのあるものであった。
ナヴァール王には谷津恒輝、フランス王女には嶋美咲が演じ、田舎者コスタードは庄司勉、ジャケネッタは 三浦明日香、警吏ダルは松本淳がピエロのように赤鼻と頬紅をつけた道化回しを演じた。
日本では上演されることが少ないこの劇を存分に楽しませてもらった。
上演時間は、休憩なしで2時間。
翻訳/小田島雄志、演出/遠藤栄蔵
7月15日(日)14時開演、板橋区立文化会館小ホール、全席自由席
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