最近のシェイクスピア・シアター公演の中では最高に面白い、活気のある舞台であった。特に第二部がよかった。
第一部の王宮や貴族たちの台詞回しはモノトーンで暗く沈んだ調子で、この場面はつい眠くなってしまったが、清水圭吾が演じるフォルスタッフ登場の場面が活気にあふれ、舞台を大いに盛り上がらせていた。
第二部はプロローグとして「噂」が登場して始まるが、フォルスタッフを演じる清水圭吾と地方判事シャロ―や高等法院長などを演じる高山健太の二人が、歌謡曲の「噂を信じちゃいけないよ」の音楽に乗って、ダンスをしながら「噂」の台詞をノリノリの活気で語り、「噂」の役の終わりに、清水圭吾が頭からかぶっていたフード付きの衣装を高山健太にかぶせ、高山健太はそこでノーサンバランド伯に変じ、第二部が始まっていく。
主要な役柄は、一部二部共通の登場人物は原則的に同一俳優が演じていたが一部例外があり、第一部では高山健太はウスター伯を演じ、ノーサンバランド伯は日戸秀樹が演じていたのだが、第二部では日戸はウォリック伯を演じ、一部二部での役柄を入れ替え、その変化の面白さを出していた。
第二部の面白さは、フォルスタッフを演じる清水圭吾と、一人3役演じる高山健太の掛け合いの演技の面白さで、特に、高等法院長からシャロ―に入れ替わる時などは、舞台上で高等法院長の衣装を脱ぎ去ることでとっさに役柄を入れ替わるという芸当で、スピード感を持たせた活力ある演技であった。
シャロ―の邸でのフォルスタッフと彼の部下をもてなす宴席の場では、ほとんど口を開かない、声を出しても聞き取れないほどの小声のサイレンスが、突然に歌い始め、踊り出すシーンは余りの突然さで、舞台上のフォルスタッフやシャロ―判事が凍りついたようにあっけにとられた表情もさることながら、観客までもあっけにとられてしまう豹変で、それが機械仕掛けのように何度となく繰り返され、面白さを増幅した。そのサイレンスを演じたのは、荒木遼で、彼はバードルフ卿も演じ、第一部ではモーティマーとブラントを演じている。
清水圭吾のフォルスタッフは、腹や足に詰め物をして巨体を作り上げ、その雰囲気がよく出ていただけでなく、台詞回しも非常に良かった。
演技面では、第一部でホットスパーを演じ、第二部でドル・ティアシートとウェスモランド伯を演じた鷹野梨恵子と、第一部・二部の両方で居酒屋のおかみクイックリーを演じた奥山美代子の演技や台詞回しが注目に値し、ヘンリー四世を得丸伸二が渋く演じ、ハル王子は西尾洪介が精悍に演じ、存在感を示していた。
上演時間は、第一部が途中10分間の休憩を入れて2時間10分、第二部が10分の休憩を入れて2時間25分。
翻訳/小田島雄志、演出/出口典雄
6月10日(日)11時開演(一部)、15時開演(二部)、中野ザ・ポケット
チケット:5000円(セット価格)、座席:E列5番(一部)、E列6番(二部)
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