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  新地球座主催・荒井良雄娑翁劇場 第17回
               『ヴェローナの二紳士』         
No. 2018-025

 タイトルが示すように、この劇の主人公は二人のヴェローナの二紳士ヴァランタインとプローチャスであるが、今回の朗読劇に限っては、3人の女性の登場人物、ヂューリャ、ルーセッタ、シルヴィア姫を演じた倉橋秀美、北村青子、森秋子の演技が秀逸で、見ごたえ、聴きごたえのあるものであった。
 朗読劇なので演技というのは少し憚るが、所作は狭い空間ということもあって最小限の動きだが、目の表情、声の表情の演技力が観ていて楽しいということは、やはり演技の素晴らしさと言ってもよいと思う。
 ヂューリャを演じた倉橋秀美のチャーミングな可愛らしさ、それにシルヴィア姫を演じた森秋子の可愛らしさは年齢を超えた魅力でまったく実年齢を感じさせない若さでいっぱいであったし、また、ヂューリャの侍女ルーセッタとヴァランタインの召使いスピードの二役を演じた北村青子の演技力、台詞力も凄みを感じさせる巧さを感じた。
 単なる朗読でなく朗読劇、というのは、声の表情の演技だけでなく、場面によって衣装面も変化を持たせたところにも現れているが、特に北村青子の場合は二役で、しかも女性から男性への変化で衣装の早変わりも見事であったし、その衣装も工夫を凝らしたもので朗読劇というより普通の劇と変わらないと思わせるものだった。
 一方、この物語の二人の主人公を演じたのは、ヴァランタインが久野壱弘、プローチャスが高橋正彦。
この劇の最後の場面でヴァランタインがプローチャスを許し、和解するだけでなく、自分の恋人、しかも結婚を約束していたシルヴィア姫を譲ると申し出ることなどはとても普通では考えられないものであるが、この劇をこれまでにも何度となく観る機会があって慣らされた面もなきにしはあらずだが、それほど不自然に感じないまま楽しむことが出来た。


翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
5月16日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロンにて

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