高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   スタジオアプローズ・プロデュース公演 『マクベスー呪縛』        No. 2018-023
 

シアターXで演劇集団円公演『十二夜』を観た後その足で滝沢組第1回公演『マクベス―呪縛』を観るため、そこから徒歩で5分ほどのところにあるスタジオアプローズにむかった。
開演10分ほど前で客席はほぼ満席に近かったが、幸い最前列中央部が3つほど空いており、自由席では自分の定位置である最前列中央の席を確保することが出来た。
全体的評価としては、多分に未消化な部分があるものの意欲的な構想の着眼点などに観るべきものがあった。
劇の始まりは、2016年に上演されたオーストラリア出身の映画監督ジャスティン・カーゼルの映画『マクベス』から取り入れたと思われる、マクベスとマクベス夫人が赤ん坊を埋葬する場面からであった。
続く場面は、ダンカン王に反乱軍に対するマクベスの戦闘の状況を報告する場面で、そのダンカン王には報告者が入れ替わり立ち代わりダンカン王となって慌ただしく演じた。
王が座る椅子には鎖が巻き付けられており、この劇のタイトルの一部になっている「呪縛」を表象化している。
魔女の登場は、マクベスとバンクオーの二人が魔女と出会ってその予言を聞く場面になって初めて登場するが、その魔女は一人しか登場しない。が、時に、黒い衣装の魔女とは対照的な白い衣装を着た人物(女)が一緒になって魔女的役割をする。
魔女の予言を聞かされた二人は予言に縛られ「呪縛」されることを表象して魔女から体に鎖を巻き付けられる。
マクベスの独白の台詞を魔女や周囲の人物が代わって語る手法は、ある意味では宮城聰の"クナウカ"が取るムーバーとスピーカーの分離に通じるものがあるが、意味合いとしては異なる。
原作の門番登場のコミック・リリーフの場面では、その前の場面で床を転げまわったマクベスが血の付いた手で床を汚した跡を、護衛役を務めるはずの男が汚れた床を拭い去っているところに、シートンがやって来て護衛の役を放棄していることを咎める。そこへダンカン王を起こすためにやって来たマクダフに、シートンは「合言葉」の戯れをすることで、原作のコミック・リリーフの代わりをさせるという趣向に変えていた。
原作と異なる解釈では、ダンカンが殺害された後バンクオーがマルカムをイングランドに逃亡させる手引きをすることや、マクダフの城を襲う犯人をシートンにして、彼はマクダフの赤ん坊を助けて隠していることを、マクダフと戦う場面で告白し自殺して果てるところなど、取り上げればきりがないが、随所に原作とは異なる台詞や場面を取り入れている。
その中でも効果的だと感心した一つに、'Tomorrow speech'の台詞をマクダフと戦って敗れた後の断末魔の台詞として取り入れたことであった。
また、マクダフ夫人に語らせる「男は何の為に戦うのか」というメッセージ的なテーマも特徴の一つとして取り上げることができるだろう。
全般的に演技や台詞回しに「いまだし」の感があるものの、出演者全員が20代という若々しさの意欲的な挑戦が今後の期待につながるものがあった。
出演は、マクベスに滝沢組主宰の滝沢亮太、マクベス夫人に若菜、マクダフに粂川鴻太、バンクオーに市村大輔、魔女に櫻井志保、ロスに田村陽太、マクダフ夫人に平松香帆、マルカムに嶋田有佑、シートンに上杉英彰など総勢12名。
上演時間は、途中10分間の休憩を挟んで1時間40分であったが、休憩なしでもよかったのではないかと思う。


潤色・演出/滝沢亮太、プロデュース/パク・バンイル
4月29日(日)17時開演、両国・スタジオアプローズ
料金:(前売り)3500円、全席自由席

 

>> 目次へ