第一部:3人で語る『ハムレットの告白』
瀬沼達也の英語朗読と清水英之のオリジナルの翻訳と朗読でハムレットの4つの独白を通しての『ハムレット』の物語。清水英之は翻訳と台本構成にあたって、クローディアスは全てにおいて罪を犯した疑惑があり、その罪人を罰すべきか否か、イエスの「敵を愛せよ」とモーゼの十戒の教えとの間で最高の悲劇を体験した人間としてのハムレットの悩みと、聖書が英文学に影響を如何に与えたかを考えたいと思ったと語っており、その主旨を汲んで物語の進展の語り部としてのホレイショー役を務める高木が解説文を作り、ハムレットの独白の心境について語った。
左前方:瀬沼達也、後方左:清水英之、後方右:高木登 (写真提供:宮垣弘氏)
第二部:新地球座朗読劇 坪内逍遥訳による『ロミオとジュリエット』
ロミジュリの登場しない『ロミオとジュリエット』。
普段は少数での朗読劇を考えて登場人物をしぼって台本構成しているが、今回は「シェイクスピア祭」としての祭りの気分を出すべく登場人物を増やしたが、出演者の状況によっては3人でも朗読可能なように考えて台詞構成をしたが、若手の参加もあり多くの出演者に恵まれ祭典にふさわしい賑やかな朗読劇となったことをまず喜びたい。
ロミジュリの登場しない構想が浮かんで、いざ台本構成を始めるとこの二人を登場させずに対話を構成していく困難さと、二人が登場しないでロミオとジュリエットの人物像を如何に観客に浮かび上がらせるかということに非常に苦労したが、演出者への挑戦として何とかまとめあげた。
従って、この朗読劇の評価はひとえに演出者と出演者の朗読力(演読力)に負っているといえる。
登場人物と出演者は以下の通り。
倉橋秀美(新地球座代表):序詞役、乳母
石丸躍人(大学生):ベンヴォ―リオ
加藤郁海(大学生):チッバルト
堀佑介(大学生):マーキューシオ
高橋正彦(新地球座、演出担当):キャピューレット
宮崎精一(演劇集団「たつのおとしご会」所属、84歳):モンタギュー
小林善紹(芸術創造集団「雑貨団」主宰):領主エスカラス
臺月子:キャピューレット夫人
久野壱弘(新地球座顧問):ロレンス法師
尼理愛子:能管演奏
今回、出演してもらった大学生はシェイクスピア劇を演じるのが初めてということであるが、それを逍遥訳でよくぞそこまで読み込んでくれたものと感心させられた。
感想については"雑司ヶ谷シェイクスピアの森の会"の宮垣弘さんから寄せていただいているので、ご本人の了解をいただいたので下記に掲載させてもらいます。
●宮垣弘さん("雑司ヶ谷シェイクスピアの森の会"会員)の観劇記録より
~荒井良雄記念 日英シェイクスピア祭 2018~
この時期は、あちこちでシェイクスピア関連の催しがありますが、私は昨日、高木さんが出演したり、台本構成された上記イベントを聴いてまいりました。簡単に感想を書いておきます。
自由が丘の「丘」の上に、教会のような瀟洒建物が、会場の「STAGE悠」で、坂道を登って行くだけで気分が良くなります。
公演は2部に分かれており、第一部はハムレットとホレーショーだけの「ハムレット」。
ホレーショー(高木登さん)の背景説明にしたがい、ハムレットの独白を、英語で瀬沼達也さんが、激情的に演じられ、それを清水英之さんがご自身翻訳の美しい日本語で、なぞって行きます。
「独白」の表・裏、陽・陰を併せ味わっているという感じでした。日英朗読というこの会の基本に沿ったもので、荒井義雄先生の遺志が確実に引き継がれていると感じられました。
初めと終りに、清水英之さんがギターをつま弾きながら唄われた歌も心に沁みました。
第二部は、ロミオとの出ない『ロミオとヂュリエット』と一風変わったシェイクスピアですが、倉橋秀美、久野壱弘、高橋正彦といった新地球座のベテランに、若手俳優が4人も加わって、熱演を繰り広げ、朗読劇と思えないほどの迫力がありました。
逍遥訳を再構成された高木さんの台本も、ロミオもヂュリエットを登場させずに、よくぞ、1時間以上の長丁場を、飽きもさせず、最後まで引っ張っていったものだと、その構成力に感心しました。
尼理愛子さんが能管でメリハリを付けて行って、これも見事でした。
このような形で、シェイクスピア祭を楽しむ人は、ある意味選ばれた少数(選良?)かも知れませんね。
この日、土曜日とあって、自由が丘は、観光地のように若い人達でごった返していました。
この人達の中でシェイクスピアを知っている人はどれだけいるだろうかと思いながら、帰路に付きました。
4月21日(土)14時開演、自由が丘・STAGE悠、参加費:2000円
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