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  クリム=カルム公演 『ロミオとジュリエット=断罪』        No. 2018-015

コンセプトは、古典をかわいく再構築

 ブログによると「クリム=カリム」(crime = calme)はフランス語の「罪=穏やか」で、「くりむかるむくりむかるむ」は秘密の呪文、「=」は2つで1つの名前を意味するという。
 ピーター・ブルックの『ハムレット』に出会って演劇に目覚めたという演出者のsolaと脚本家の西荻小虎が、「かわいいx古典」をコンセプトに、古典をリデザインして舞台芸術作品を創ることを目指しクリム=カリムを2017年7月に新宿を拠点にして立ち上げた、まだ新しい団体のようである。
 この公演を知ったのは、「雑司ヶ谷シェイクスピアの森」広報担当のM氏を通して会員に紹介があり、劇団名とタイトル、それに内容紹介の「教皇支持派」のモンタギュー家と「皇帝支持派」のキャピュレット家という両家の対立の要因を明確に打ち出したところに興味を感じ、すぐさま予約を入れたのだった。
 古典をリデザインするという「罪」をどのように「穏やか」に再構築するか、早速舞台を拝見。
 床に赤い絨毯が敷かれ、両サイドを客席にした舞台中央部に裸電球が12個、客席の椅子に座った位置の目線に天井から吊るされているというシンプルな舞台装置である。
 登場人物の相関図―モンタギューとキャピュレットはいずれも夫人で、ティボルトはジュリエットの兄、パリスとロザライン、マキューシオは兄、妹、弟の関係で、その父親は公爵のエスカラス、ロレンス神父は既に亡くなっていて、その後の司祭にシスターのヴェロニカが務めているという設定となっている。
 ロミオはロザラインを愛しているが、ロザラインの恋人はロミオの親友ベンヴォ―リオで、ティボルトの恋人はヴェロニカという関係になっているのが劇の展開の中で知られる。
 ベンヴォ―リオはロミオの意中の恋人が自分の恋人のロザラインということに気づいておらず、キャピュレット家の舞踏会でジュリエットと出会わせ、二人を結び付けようとする。
 ジュリエットはロミオに夢中になるが、はじめの間はロミオの関心はロザラインにしかなく適当にあしらうが、ジュリエットのひたむきさに次第に心が移っていくようである。
 ロザラインはジュリエットとロミオとの仲介役をしていくうちに、次第にロミオに気持が傾いていくが、その時点ではもうロミオはロザラインに関心がなく、ひたすらジュリエットとなっている。
 マキューシオがティボルトに殺され、ティボルトはロミオに殺され、ロミオは公爵の命令で逮捕して牢獄に入れることが命ぜられるが、ベンヴォ―リオが匿う。
 ジュリエットが仮死状態にある墓所に婚約者のパリスが訪れているその場にロミオがやって来て、二人はもみ合いとなるが、偽りの情報でロミオを自分のものにしようとするロザラインは兄のパリスを逃すが、ベンヴォ―リオがロザラインのロミオに対する気持に激高し、ロミオを殺してしまう。
 筋立ての再構築の面白さはあるのだが、台詞の面で、ヴェロニカを演じる長田咲紀は、足先まである黒いドレスの上半身は斜め半分に一方の肩がもろ肌で、腰から下はスリットが入っていて太腿まで見えるという妖艶な姿で、そのような演劇性のない野郎言葉を使うのが自分の感性に合わず、興ざめする思いであった。
 舞台の展開は、客席と一体となった舞台の周囲を疾走するスピード感のあるものであったが、全体的に台詞の言い回しに粗雑さを感じるものがあった。ヴェロニカの台詞にしろ、それが演出として意図したものであったとしても、自分には抵抗感のあるもので、折角の面白い古典再構築なだけに、惜しい気がした。
 出演は、ジュリエットに熊澤ゆかり、ロミオに炬鉄刀、ロザラインに森本あお、ベンヴォ―リオに高嶋友行、キャピュレット夫人に小沼枝里子など総勢11名。
 上演時間は、1時間40分。

 

脚本/西荻小虎、演出/sola
3月25日(日)17時開演、池袋・スタジオ空洞にて

【追 記】
この公演は、20日(火)14時開演の部で予約していたのだが、ネットで調べた案内地図で1時間かかって探し回ったが見つからず、ドタキャンではない旨の事情をメールで連絡したら、後日、代替えの日を連絡いただき、招待扱いで観させていただいた。

 

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