高木登 観劇日記2018年 トップページへ
 
   荒井良雄沙翁劇場 第16回『間ちがひつづき』      No. 2018-012
 

今回の朗読劇の解説文に「台本構成と演出について」と題して次のように記した。

<登場人物を、アンティフォラス兄弟とドローミオ兄弟、エフェサスの公爵、イジーオンとその妻イミーリア、エフェサスのアンティフォラスの妻エードリエーナとその妹ルーシアーナの9人にして、これを男優2名、女優2名の4人で演じる予定で構成した。
舞台では、アンティフォラスとドローミオの兄弟をそれぞれ2名ずつで別々の俳優が演じる演出と、双子をそれぞれ一人で演じる演出がある。別々の者が双子を演じる場合、半仮面をつけて体形が似た者をそれぞれ兄弟にして、衣装も全く一緒にする事でどちらがどちらか見分けがつかない演出をしたのがシェイクスピア・シアターの出口典雄演出であったが、双子を一人で演じる場合、兄弟の区別を帽子の向きやスカーフなどの小物で区別する演出が取られることが多い。
今回、男優は双子の兄弟をそれぞれ一人で演じるだけでなく、公爵とイジーオンをも演じる前提としており、双子の兄弟の区別だけでなく、最後の大円団の場面でこの二人をも演じなければならない台本構成となっており、そこが見どころであり、聞きどころともなってくる。
女性の登場人物は3名で、前提は2人で演じる予定であるが、一人で演じるという方法もある。 
その事も含めて、今回演出者がどのような設定で出演者を組むかも台本構成者の立場から楽しみにしており、観客(聴衆)の皆さんも双子の兄弟の騒動と混乱ぶりをお楽しみいただけたらと願っています。>

キャスティングは、公爵とドローミオー兄・弟を久野壱弘、イーヂオンとアンチフォーラス兄・弟を高橋正彦、エードリエーナを白井真木、ルーシアーナと院主イーミリアを倉橋秀美。
双子の兄弟を同一人物が演じ、しかも何も変えずに台詞だけで兄・弟を区別するという演出であったが、アンチフォーラスの家の前の場面でドローミオー兄弟が同時に登場する場面では、弟が楽屋内に入ってそこから声を出すという工夫で久野壱弘が忙しく立ち動いてこなし、二人の声色の調子を変えて面白く演じたのが見ものであった。
このドローミオー兄弟とアンチフォーラス兄弟はひっきりなしに舞台に登場し、兄弟が入れ替わる場面転換に際しては、石岡凱夫のギター演奏でうまく間をつなぎ、兄・弟の人物変化がスムースになされた。
この二人の出番が圧倒的に多い中、エードリエーナとルシアーナの台詞が強烈で心地よさを感じさせたが、特にエードリエーナを演じる白井真木が二人の男性を圧倒した。
印象的だったのは、ルシアーナを演じる倉橋秀美の目の表情、エードリエーナの台詞に対して目をぱちくりしばつかせる仕草が何とも愛らしくチャーミングであった。その彼女が院主を演じる場面では打って変わって厳粛な雰囲気で重々しい台詞遣いとなってその対照的な演技にも魅せられた。
尼僧院に入っていく前、ドローミオー兄弟だけが残って二人が入っていく順番を譲り合う場面では、久野壱弘が兄・弟を、忙しく向きを変えて仕草・表情豊かに演じ、この劇の最後を締め括るのにふさわしい演技で締めた。
面白くて笑い出しそうになったのをこらえたという観客の感想に、分かってもらえたと安心した。
これまで上演してきた沙翁劇シリーズの中でも面白さの点では最高の一つとして思えるものであった。
この日は春分の日であったが、午前中は雪で、午後からは雨に変わって非常に寒い日であったにもかかわらず、満席の盛況であった。


翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、台本構成/高木 登、演出/高橋正彦
3月21日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロンにて


>> 目次へ