高木登 観劇日記トップページへ
 
  東京シェイクスピア・カンパニー(TSC)、第12回横浜山手芸術祭参加作品
    ドラマティック・リーディング 『じゃじゃ馬馴らし、ですって!?』 
No. 2018-003

 第12回横浜山手芸術祭参加作品として、東京シェイクスピアカンパニー(TSC)が公演したのは、ドラマティック・リーディング『じゃじゃ馬馴らし、ですって!?』。
 『じゃじゃ馬馴らし』は、2010年にTSC設立20周年記念第二弾として『じゃじゃ馬はいかが』として本公演で上演されているが、そのとき江戸馨がこの作品を見直したきっかけは、1987年にロンドンのバービカン劇場で観たRSCのブライアン・コックスのペトルーチョとフィオナ・ショ―が演じたキャタリーナの恋愛劇『じゃじゃ馬ならし』だという。その時の感動と感激を、江戸馨はキャタリーナとビアンカの二人姉妹から4人の姉妹に変えての4つの恋物語に変容させて上演したのが『じゃじゃ馬はいかが』であった。
 今回は、そのタイトルを少し変えての朗読劇だが、タイトルについた「いかが」と「ですって!?」の微妙な違いに演出の思いが感じられる。
 江戸馨が主宰するTSCの朗読劇は、最近の一般の傾向としての演技や動きを伴った劇読や演読と異なり、朗読力(台詞力)を前面に立てていることと、江戸馨本人による翻訳、そして全体の解説と場面ごとの温かみのこもった解説に大きな特徴がある。
 朗読をするのは5名で、複数の登場人物を演じるだけでなく、一つの場面で出演者の役柄が変ったり、場面によって一人の登場人物を異なった出演者が演じるので、台詞力がしっかりしていないと聴いている観客は戸惑う可能性があるが、丁寧な解説と出演者の台詞力でしっかりと見分けがつけられていた。
 タイトルの語尾にある「ですって!?」の「!」「?」は、キャタリーナを演じたつかさまりとペトルーチオを演じた丹下一の最後の場面での目と顔の表情によって見事に表現されていた。その意味では台詞を聴いていても表情や目の動きから目が離せない。
 全体の構成は6場面からなり、最初はピザから学問の都パデュアにやってきたルーセンシオとトラーニオの主従が登場する<パデュアの街>、続いてヴェローナから友人のホーテンシオを訪ねてきたペトルーチオが登場する<ホーテンシオの家の前>、ペトルーチオがキャタリーナに求婚する場面の<バプティスタの家>、ペトルーチオがキャタリーナのじゃじゃ馬馴らしをする<ペトルーチオの屋敷>、ペトルーチオとキャタリーナが連れ立ってバプティスタの家に行く<旅の途上>、最後はキャタリーナが妹のビアンカとホーテンシオの妻となった未亡人を前にしてj妻の夫に対しての在り方を説く<そして…>の最終章。
 出演者は全員複数の役を演じるが、ペトルーチオを演じた二人の丹下一は他にバプティスタを、キャタリーナを演じたつかさまりはトラーニオやグレミオを、真延心得はルーセンシオほかグルーミオ、グレミオ、バプティスタ、ヴィセンシオ、ビアンカを演じたしんばなつえはホーテンシオやトラーニオも演じ、解説を担当する江戸馨は、ビヨンデロや未亡人、グレミオなどを演じた。それぞれの演じ分けの朗読が聴きどころであり、楽しみでもある。
 最後になったが、朗読劇には雰囲気も大切なひとつだが、出演者がそれぞれに特色のある衣装で登場し、解説者の江戸馨はじゃじゃ馬にちなんで乗馬服の衣装に帽子をかぶっての登場であった。
 上演時間は、約90分。

 

訳・構成・演出・解説/江戸 馨、作曲・演奏/佐藤圭一
1月28日(日)14時開演、横浜ブラフ18番館

 

>> 目次へ