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  新地球座主催・荒井良雄娑翁劇場、第15回
             『ぢゃぢゃ馬馴らし』            
No. 2018-002

 この劇の最後の場面は、3人の既婚の男性がそれぞれの妻を呼びにやって誰の妻が従順にやってくるかかけを死、もっとも見込みの薄いと思われていたペトルーキオの妻カタリーナのみがやって来てペトルーキオが賭けに勝ち、カタリーナにルーチェンシオーの妻ビアンカとホーテンシオーの妻である未亡人の二人に対していかに従順に夫に仕えるべきかを諄々と説教をさせる。
 このカタリーナの豹変ぶりは批評史において論議を呼ぶところでもあるが、それはさておき、この朗読劇での演出でもっとも印象的だったのは、全員が退場した後、あとに残ったルーチェンシオーが「かう言っちゃ何ですが、全く不思議です、カタリーナさんがあんなに従順におなりになったのは」とつぶやいているところに、奥の方から「あなた、早く来なさいよ!」とビアンカの激しく強い口調が聞こえてくるという終わり方であった。
 ビアンカの最初の登場では、彼女を見初めたルーチェンシオーが「けれども黙っているもう一人のほうは、いかにも娘らしく、おとないしやかで、もの静かだ」と表現しているように、誰が見ても従順でしとやかな娘であったのが、結婚してからの豹変はカタリーナの逆の対をなしている。
 台本にはない台詞を加えることで、人物像を立体的に浮かび上がらせる演出の妙味というものを十二分に味あわせてもらった。
 朗読劇の妙味としては倉橋秀美のカタリーナの朗読力と表現力、ちょっとした目線の表情の変化は、小さな空間ならでは味あうことが出来るものであったが、それはペトルーキオ演じる久野壱弘の台詞力があって一層印象深く響くものとなっていて、この二人の言葉のバトルが何といっても今回の朗読劇での聴き所であった。
 やないまいが演じたビアンカはしたたかさをしのばせた表情と台詞表現で彼女の内面をよく描き出し、トラーニオを演じた石井麻衣子はルーチェンシオーの身代わりを演じる場面では丸い黒縁眼鏡をかけ道化的役割を含ませて楽しませてくれ、ルーチェンシオーとホーテンシオーは高橋正彦が一人二役を務め、その人物変化を首に巻いたマフラーの状態で演じ分けた。
 今回の朗読劇では、NPO法人シニア総合研究会副理事長で「ポップスとカントリーを唄うサロン」講師でもある石岡凱夫がギター演奏し、「グリーンスリーブ」の演奏と歌で最後を締めくくった。

 

翻訳/坪内逍遥、監修/荒井良雄、演出/高橋正彦、台本構成/高木 登
1月17日(水)18時半開演、阿佐ヶ谷・喫茶ヴィオロン

 

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