高木登 観劇日記トップページへ
 
  関東学院大学シェイクスピア英語劇・第66回公演
                『ヴェニスの商人』       
No. 2017-062

 開幕は、ランスロット役の道化が、物語のあらすじを日本語で語るところから始まった(大変良かった)。
 出演者に見覚えのある顔が多いと思ったら、昨年1年生として初めて登場した7名が全員今年も出演しているだけでなく、ポーシャを演じた4年生のMana Satoは4年連続の出演、ランスロット・ゴボーを演じたEriko Kanamoriは1年生の時に『ロミオとジュリエット』でジュリエットを演じて以来のカムバック出演。総勢14名の出演者のうち1年生が4名、2年生が8名、4年生が2名の構成であった。アントーニオ役は昨年『テンペスト』でプロスペローに抜擢されたShinji Suzuki、シャイロックはファーディナンドを演じたRyo Oishi、バサーニオは昨年も男役でセバスチャンを演じたMirai Terada、ネリッサはエアリエルを演じたAiri Shimizu、ロレンゾーはアロンゾを演じたTomoki Saiki、ポーシャの求婚者モロッコ王、テューバル、ヴェニスの公爵の3役はステファノ―を演じたTakahiro Yoshikawa、ジェシカと老ゴボーにはゴンザーローを演じたSaki Edure。
 ランスロットを演じたKanamoriは、他にポーシャの求婚者アラゴン王も演じ、その際、'r'の発音を巻き舌にして発声を変えて変化を持たせるだけの余裕もあり台詞も演技も堂々としていると感心したが、彼女は演出主幹の瀬沼達也が主宰する横浜シェイクスピア・グループ(YSG)の一員として活動している金森江里子だと、劇が終わってからはじめて気づいた。
 『ヴェニスの商人』には、「箱選び」と「人肉裁判」と「指輪騒動」の3つの山場があるが、それぞれの場面にちょっとした工夫を持たせて楽しませてくれた。
 「箱選び」では、バサーニオが箱選びをする誘導の「ディンドン、ベル」はなく、ポーシャとバサーニオ、ネリッサとグラシアーノとで、ラブソングの形の四重唱で歌われ和やかな雰囲気を感じた。
 グラシアーノとネリッサの二人の恋も、原作にはない箱選びの前に愛の言葉を交わす場面を挿入することで視覚化してその下地を作っていたのも、原作を知らない人にとっては分かりやすかったのではないかと思う。
 「人肉裁判」では、最後にアントーニオがシャイロックにキリスト教徒に改宗する条件を付けた時、彼が身に付けていた十字架をシャイロックの首にかけるという所作を加えているが、このことをどのように解釈するか、それが問題だ!(ここでは色々考えさせられた)
 「指輪騒動」では最後のアントーニオをどのように演出するか、というのが近代の演出の見せ場でもあるように思うが、大円団で一同が退場していった後、ひとり腰を下ろし、そのまま暗転で特に複雑な感じはなかった。
 1年生の出演者は、Tatsuya Nishioがサレーリオ、Riku Gonoiがソラーニオ、Haruki Suganumaがバルサザー、Takeru Okadaがグラシアーノ、また2年生のJunpei Ideは1年生の時に舞台装置・小道具などのスタッフとして参加していたが、今回も同じくスタッフをしながらキャストとしてバルサザーの召使いリオナードを演じた。
 彼らの出演を来年も期待!!
 上演時間は、休憩なしで2時間20分。
<アンケート用紙への回答として> 総合評価:★★★★(bの「良かった」)
<個別質問に対して>
(1)発音について(声量含む):b(個々のばらつき、個人でも時に聞き取りにくい場面もあったが、平均点として)
(2)演技、(3)音響・効果、(4)照明、(5)衣装、(6)メイクアップ:いずれも、b
(7)小道具・舞台について:a (舞台装置は大変良かった)
(8)字幕:最前列なので見えないし、また見なかった。

 

演出主幹/瀬沼達也、12月9日(土)12時30分開始、神奈川県民共済みらいホール

 

>> 目次へ