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  カクシンハン POCKET 07 『ロミオとジュリエット』       No. 2017-057

「日本のアンデルセン」と言われた久留島武彦の話から始まる『ロミジュリ』

 開幕の合図もなく真以美が登場し、テーブルの上に積まれた童話の本の一冊を取り上げて、ページをめくりながら声に出して読み始め、思い出したように表紙の著者の名前を確認して、「久留島武彦?」とつぶやきながら再び読み始める。
 のぐち和美がゆっくり登場してきて、椅子に腰を下ろし、「日本のアンデルセン」と呼ばれた大分出身の久留島武彦(1874-1960)の話の中から、今日は400年前の『ロミオとジュリエット』を読みましょうと言うと、のぐち和美と一緒に登場してきた河内大和が、そのきっかけにマキューシオの夢の話、マブの女王のくだりを語り始める。
 導入部は話の前後をさせながらも、あとは物語の展開に沿って進んでいく。
 この物語の冒頭部のキャピュレット家とモンタギュー家の召使い達の喧嘩騒ぎは、真以美が両手に玩具のボクシングのグローブをはめ、一方は赤、もう一方は青ということで、両家の違いを表し、グローブとグローブをぶつけて喧嘩の様子を面白おかしく表現する。
 ロミオとジュリエットの初夜の場面では、「あしたのジョー」(だと思うが、音楽にからきし自信がないので間違っているかも)のテーマ音楽が流れて、二人は激しくボクシングの仕草を繰り返すことで閨の様子を描き出し、その仕草と音楽で観客の笑いを誘う。
 ロミオにジュリエットの死を知らせに奔るのは、この演出では乳母に代えていたのも、面白い工夫の一つであった。
 カクシンハンは、本公演とは別に、このようにシェイクスピアの作品を短くダイジェスト版にして、かつオリジナルの趣向を凝らしたポケット公演を続けているが、これが結構面白く、その遊び心が楽しい。
 今回のこの公演は、本来、カクシンハン主宰者の木村龍之介の出身地である大分県の玖珠郡にある「わらべの館」での公演であるのを、東京でも1日限りで上演されたものである。
 ジュリエットに真以美、ロミオに岩崎MARK雄大、乳母とロレンス神父をのぐち和美、ピアノ演奏と薬屋の役を劇団5454の森島緑、そして他の公演日程が詰まっている河内大和が(予定外に)マキューシオなどの役で出演。
 上演時間は、1時間15分。

 

構成・演出/木村龍之介、11月17日(金)13時開演
新宿・絵空箱、チケット:3500円(ドリンク付き)、全席自由

 

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