高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   黒鯛プロデュース・第15回記念公演 『恋の骨折り損』            No. 2017-052
 

演劇ユニット・黒鯛プロデュースは2000年3月、「舞台を観慣れない方でも気軽に笑って泣いてもらえる芝居を目指す」として、三軒茶屋のシアタートラムで『何のこれしき』で旗揚げし、今回が15回目の公演で、上演歴を見るとシェイクスピアに関連する劇は今回が初めてで、題して「黒鯛版・笑うシェイクスピア!『恋の骨折り損』」とある。
タイトルと劇中に登場する老舗女性アイドルグループのヒット曲『恋の骨折り損』以外、直接的にはシェイクスピアの劇とは何の関係もないが、観劇後の印象にシェイクスピアの『恋の骨折り損』を十二分に感じさせるものがある。
デビューから30周年を迎えるこの女性アイドルグループは、旺盛時には60人のメンバーを抱えるほどの人気アイドルグループであったが、今では創設時の「なつこ」と彼女を慕って入って来た「ひろみ」と「めい」のわずか3人のみで、この30周年記念公演も地方回りというわびしい状態。
その初日の前日、所属する事務所が中国の大手エンタメ会社に買収されたという知らせとともに、その会社のオーナーが突然やって来るところから舞台は始まる。
オーナーである王社長が、アイドルグループに向かってこれまでやってきたことが「恋の骨折り損」だったということを知るでしょうという言葉を、部下である荒井部長が「骨折り損であった」ということで、アイドルグループの解散と誤解して取ってしまうところから事件が展開していく。
このアイドルグループに課せられた規律として恋愛御法度があり、3人はこれまで恋人も作らず独身のままできたが、この騒動の中で、なつこが王社長と30年前の恋人だったことや、ひろみと荒井部長が秘密の恋仲であることが発覚し、めいも音楽担当社員の木谷左に言い寄られ、メンバーが仲間割れし、ツアーコンサートのキャンセル騒ぎなどと続くが、結局この3人3組が最後にはそれぞれ結ばれ、アイドルグループは全員既婚者グループとして続けられることになり、ハッピーエンドとなる。
王社長は、30年前エンタメ会社のプロデューサーとしての勉強で中国から1年間日本に留学していて、その時、デビュー前のなつこと恋仲になったが、1年間の留学期間を終えて彼女には黙ったまま帰国してしまう。
その時、王社長が「恋の骨折り損」の意味をなつこに尋ねた時、彼女は逆の意味を教えてしまったのが元で、その意味をそのまま覚えていた王社長が、荒井部長に「これまであなたたちがやってきたことは恋の骨折り損だったことがわかるでしょう」という意味を取り違えてのことだった。
また、アイドルグループに恋愛を禁じた謎のキングPの正体は王社長その人であったことも判明し、恋愛を禁じた理由は、自分がひとかどの人物になるまで、なつこの結婚を禁じることが目的であったことも明らかとなる。
感動的な場面は、グループの解散をやめさせようと彼女たちの志望動機や、ファンからのアンケートを読み上げた時、思わずウルウルし、泣かせる場面であった。
登場人物の中で、なつこ一人だけが大阪弁だというのも、劇全体を何となく柔らかく包み込む雰囲気があった。
これらの人物相関関係は、王社長がナヴァール国王ファーディナンド、なつこがフランス王女、荒井部長と音楽担当社員の木谷左がさしずめ、ビローンとロンガヴィル、もしくはデュメイン、ひろみとめいがロザラインとマライア、あるいはキャサリン役といったところで、マネージャー役の阿真戸はボイエットにあたるだろう。
筋書きを概略してもこの面白さを伝えるのは困難だが、このユニットが目指す「気軽に笑って泣ける」舞台で、本当に楽しめる舞台で、きっとシェイクスピアも笑っていたことだろう。
出演は、なつこにこのユニットを立ち上げた和泉ちぬ、ひろみに元宝塚のトップ娘役の星奈優里、もえにマルチ才媛女優の松下萌子、王社長に平川和宏、荒井部長に今村裕次郎、音楽担当社員の木谷左に宮原将護、マネージャーの阿真戸に島崎裕気、そしてメモリアルホールのマネージャー兼マルチ担当の小須田役にSONIC。

原案/W. シェイクスピア、企画・脚本/小鹿坂はらひと、演出/遠藤理史、美術/斉藤健治
10月21日(土)14時開演、池袋シアターグリーンBox in Box Theater
チケット:3800円、全席自由席(最前列中央の席に座る)


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