高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   SAYNK主催・日英語朗読劇 第4回
  『ウィンザーの陽気な女房たち』 ~The Merry Wives of Windsor~
    No. 2017-049
 

2日間で3時間しか睡眠が取れていないと超多忙な瀬沼達也氏の朗読劇に先立っての30分間のレクチャーで特に印象に残った話は、1975年、彼が19歳の時、関東学院大学の学生で大学のシェイクスピア英語劇で演じたのが『ウィンザーの陽気な女房たち』のフォルスタッフで、当時、衣裳は俳優座から借り入れていて、彼が着用した衣装は千田是也がフォルスタッフを演じた時のものであったというのが驚きであった。
『ウィンザーの陽気な女房たち』はシェイクスピアの作品の中で唯一、イギリスの市民劇で言葉も方言やフランス語訛りがあってそれを英語で演じるのは至難の業であるというので、いつもは英語が8割、日本語2割という比率を、日本語の比率を高めての朗読にされたことを説明された。
フォルスタッフ役は、東京シェイクスピアカンパニー公演の客演としてフォルスタッフを演じたことがある増留俊樹。
かつてこの役を演じたことのある瀬沼氏も、身体的特徴からしても彼に譲らざるを得ないと、冒頭のレクチャーでこぼされていたが、増留氏はこれまでの経験もあってさすがに役にはまっていて大いに楽しませてくれた。
だが、この劇ではタイトルにもあるように主役は女房たち、すなわち、フォード夫人、ペイジ夫人、そしてクィックリーで、フォード夫人は小嶋しのぶと飯田綾乃のダブルキャスト、クィックリーも杉山由紀と遠藤玲奈の二人が演じ、ペイジ夫人のみがゲスト出演の阪口美由紀が一人で演じた。
阪口美由紀は、流山児祥が指導する熟女の劇団"楽塾"歌舞伎で劇団員としてシェイクスピアの『十二夜』(2012、13年)などで喜劇的役を演じたこともあり、日本語による舞台に立った経験も豊富で、楽塾の特徴でもあった、楽しんで演技することが体全体に現れていて、日英語ともその台詞力、所作は人を惹きつけて離さないものがあった。(ちなみに2013年の『十二夜』は海外公演版で、カナダでも公演されている。)
8人で17人の役を演じるということで、出演者とキャストをマトリックスにして示し、また作品の台詞の行数がPenguin版で2699行あり、そのまま全部やると2時間半は優にかかることから1497行にカットしての朗読で、それを各場面と登場人物、台詞の行数をマトリックスにして、且つカットした場面を網掛けして示すことで場面と登場人物の状況が把握できるようにした一覧表を当日の配布資料に加えてくれているので、この作品を知っている者にとっては全体を把握するのに非常に助かった。
この日英語朗読劇の楽しみは出演者の英語の朗読を聴くことにあるが、今回もそれは十二分に味あわせてもらった。
2日間でわずか3時間の睡眠しか取れていない瀬沼氏は、レクチャーでは話がまとまらないところがあったものの、本番となるとさすがにいつもの素晴らしい英語の台詞力を楽しませてくれた。その瀬沼氏は、今回、フォード、キーズ医師、ガーター亭の主人、ニムの4役。氏は、英語がネイティブそのものである代わりに日本語の台詞に癖が出るので、むしろフランス語訛りのキーズ役は敢えて訛らせなくてもそのままで訛っているので適役かも知れない。
一人一役はフォルスタッフの増留俊樹、ペイジ夫人の阪口美由紀、それにフォード夫人の飯田綾乃だけで、小嶋しのぶ、杉山由紀、立花真之介、遠藤玲奈は3役も4役も受け持ち、一人の人物を二人の出演者が場面によって入れ替わって演じるのもこれまで通りの趣向で、出演者の違いによる異なった趣を楽しむことが出来た。
この会の名前の通り、出演者のみならず観客も、楽しく、愉快に、シェイクスピアを愛することができる、その雰囲気がいい。
初年度で早くも4作まで進み、来年は年明け早々の1月7日(日)に『ロミオとジュリエット』が決まっているので、自分の観劇予定表に記入している。キャスティングも楽しみ。

講師・演出/瀬沼達也、10月15日(日)14時開演、神奈川近代文学館・中会議室にて


>> 目次へ