高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   新潟シェイクスピアカンパニー&シアター代官山プロデュース『十二夜』(月組公演)No. 2017-046
 

栗田芳宏が所長をしている新潟エクステンションスタジオの研究生と東京の劇団ひまわりの俳優と研究生たちとによるコラボレーションだということで、三日連休の日曜日、台風18号の影響であいにくの雨降りではあったが、出演者の関係者も多く、新潟からもかなりの観客が来られ、会場は満席状態であった。
こういったことは、開演前の観客たちの雑談から聞こえてきて分かることだが、自分の右隣に座っていた女性も、その右隣の女生徒との会話で、出演者の山賀晴代のいとこで2歳の子供がいるが預けてきて、こんな時にしかこういう自由はできないと、隣り合わせた新潟から母親と一緒に来られた女性と会話を交わしていたが、こういう雰囲気が自分は好きである。
公演は、キャストを入れ替えて、星組と月組の二つに分かれ、自分は日程と時間の都合もあって月組を選んだが、幸いというか偶然というか、演出を兼ねる栗田芳宏がサー・トービー役で、オリヴィアを山賀晴代が演じる組であったのはラッキーであった。
研究生と俳優とのコラボレーションという関係からか、これまでの栗田芳宏演出のシェイクスピア劇と較べると素直な感じで、少々教科書的で多少物足りなさが残ったが、若い出演者たちの演技や台詞の発声がすがすがしさを感じさせてくれたのは救いであった。
プロセニアム式の舞台で、舞台装置としては応接セットの長椅子を中央に、一人がけの椅子を左右に置いただけで他には何もなく、場面が変わってもセットはそのままであった。
幕が開くと、オーシーノ公爵(佐戸彰悟)が長椅子に座って音楽を聴きいり、その下手側にはキューリオが立って控えているが、しばらくして、オーシーノが立ち上がって舞台前面に進み出て両手を前に差し出し、「音楽が恋を育む食べ物なら、続けてくれ」と朗々とした声量で朗々と観客席に向かって台詞を語る。
このように真っ直ぐでひねりのない演出はほとんど見ることがないので、却って新鮮な気がした。
続く2場では、ヴァイオラと船長の登場は上手側観客席の通路から登場して舞台の上に上がるが、このように観客席の通路からの登場はいくつかの場面で使用され、プロセニアムの舞台に変化を持たせていた。
演技や台詞の面ではサー・トービーを演じた栗田芳宏がやはり群を抜いていて、見ていてもゆとりと安心感を感じさせ、融通の利かない謹厳実直なマルヴォーリオを演じた荒井和真の演技にも、じんわりとした好感を覚えるものがあった。
この演出では、道化のフェステ(山口泰央)の歌う場面がまったくなく、これも物足りなさの一因となっていたが、そのためか、最後の場面では男装のままのヴァイオラがオーシーノに手を引かれて共に退場するとき、それまでヴァイオラがシザーリオとして被っていた帽子を投げ捨て、床の上に落とされたその帽子を、表象化するようにスポットライトを当て、そのまま幕が引かれるという工夫を凝らして余情を残していた。
ヴァイオラには永瀬千裕、セバスチャンに長谷川隆大、マライアに中澤里香、サー・アンドルーに渡辺龍臣など若手陣が元気よく好演して楽しめたのも、ベテラン俳優と研究生とのコラボレーションの効果の賜であろうか。
上演時間は、途中15分間の休憩を挟んで、2時間30分。

訳・スーパーバイザー/松岡和子、演出/栗田芳宏、9月17日(日)11時開演
シアター代官山、チケット:4000円、座席:C列12番


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