高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   横内正主演 『 リア王 2017 』      No. 2017-043
 

この舞台で感じた大きな特徴の一つは、リアを演じる横内正の声と表情が亡くなった平幹二朗にそっくりだったことと、今一つは、舞台全体を支配していて目を見張るものがあった、時広真吾のデザインによる舞台衣装の豪華絢爛さであった。
キャスティングを確認するために買ったパンフレットに衣装の解説が詳しく記されており、それによるとリアの3人姉妹が謁見の場で着用する衣装は、「様々な綾の帯をパッチワークしたガウンで、コーディリア(棚橋幸代)は85の帯のパーツ、ゴネリル(愛華みれ)、リーガン(秋本奈緒美)のガウンは10本の帯を使用、リア王はゴールドラメの布をベースに120のパーツの帯・着物地・輸入の生地をパッチワークしたグランドガウン、袖口の布は打掛の布を使用し、インナーのローブ(長衣)の胸元には蝶を織り出した帯地をアップリケして人生のはかなさを表現した」とある。
衣装から受ける登場人物の印象は、古代ブリテンの世界でありながら平安時代の貴族の世界のようにも見える一方で、時代を限定しない無国籍的な舞台であった。
冒頭シーンでは、舞台全体が古代ブリテンの地図の垂れ幕で覆われ、謁見の場になってそれが舞台上にさっと落とされ、そこには玉座に座した豪華絢爛な衣装のリア王がいて、眼を見張らせた。
そのほかに、横内正と野伏翔共同の上演台本による野伏翔の演出の特徴として、通常の演出とは異なる3つの点が注目された。
一つは、リアの謁見の場に道化(下條アトム)が最初から登場し、コーディリアがリアから勘当された場面では彼女に寄り添って悲しげな表情で慰める演出、二番目はこの舞台では2幕目の冒頭シーンになる嵐の場で、舞台両脇の高台にゴネリルとリーガンの二人の姉妹が立って、リアを責め立てる台詞を発し、リアは嵐を耐え忍ぶかのようにその暴言を耐え無言のままで、二人の姉妹が消えたところで嵐に向かって叫ぶ台詞を初めて吐くが、その叫びは大きくは聞こえないものだった。
3つ目は、絞殺されたコーディリアを連れてリアが登場する場面であるが、通常はリアがコーディリアを両腕に抱いて登場することになっているが、この演出では横内正の年齢を考えてか、付き添った兵士がコーディリアを抱いて、リアは手ぶらのまま登場したことであった。
今一つ加えるならば、ブリテン軍とフランス軍の戦闘場面で、フランス軍は殆ど女優たちからなっていたが、ブリテン軍の男優たちより彼女らのアクロバット的な動きの方が目を引き、この場面は見せ場の一つと考えてか、かなり長い戦闘シーンを繰り広げたのも特徴であった。
その他の出演としては、オールバニー公爵に合田雅吏、ケント伯爵に加藤頼、グロスター伯爵に黒岩徹、エドマンドに志村朋春、エドガーに荒川智大、コーンウォール公爵に水谷あつし、紳士に海援隊の千葉和臣など。
なお今回の公演は、昨年に続く三越劇場での再演ということであった(残念ながら、昨年の公演については自分の情報に入っていなかった)。
見せる劇で台詞に力があったにもかかわらず、感動を受けるには至らなかった。
上演時間は、途中25分間の休憩を挟んで3時間。

翻訳/小田島雄志、上演台本/横内正・野伏翔、演出/野伏翔
衣装デザイン/時広真吾、美術/浅井裕子、8月25日(金)13時開演、三越劇場
チケット:(S席)8500円、パンフレット:1000円、座席:5列15番


>> 目次へ