高木登 観劇日記2017年 トップページへ
 
   KUNIO13 『夏の夜の夢』      No. 2017-042
 

美術も兼ねる演出家の杉原邦生にとっては舞台美術も演出の大きな要素となっている。
あうるすぽっとの舞台を横長に水平に広くとって、二層構造の上殿に置かれた『夏の夜の夢』の頭文字AMSNDの大きな文字盤をはじめ、舞台上の冷蔵庫、ソファー、長椅子、出入り口用の扉、物置台、物置小屋、木枠だけのベッドなど舞台装置はすべて白色で統一されているだけでなく、登場人物の舞台衣装も全員が白一色。
舞台上のそれらのセットは場面展開ごとに登場人物たちによってさまざまな位置に移動される。
舞台装置の凝りようは、3年前の『ハムレット』につづいて今回も桑山智成による新訳での上演ということにも表れており、そこにあるのは既存の概念、既存の権威の否定、拒否の姿勢がある。
最初に登場するのは、白い水玉模様のある黒のワンピース(まだ誰とは分からないこの人物だけが、最初の登場で白い衣装でない)姿の女性で、手に持った紙袋から物を取り出して冷蔵庫に入れ、そのまま舞台上手にあるベッドにうつ伏して寝てしまう。
舞台中央に置いてあるドラえもんの「どこでもドア」のような扉からシーシウスが現れ、一連の台詞を語るが、その相手であるヒポリタの姿はなく、彼女は小さな物置小屋に犬のぬいぐるみを手にして身を埋めてちぢこまっている。
この一連の冒頭のシーンが通常の演出とは異なり、意表をついている。
登場人物では、ボトム以外のアテネの職人たちが妖精役を兼ねていたが、そのアンバランスな諧謔性がこれまでの演出ではあまり見かけないものでかえって面白味があった。
惚れ薬のせいでヘレナをめぐって争う場面では、舞台上にリングを拵え、その中で4人の若者たちがサングラスをかけ、マイクを片手にラップ調の台詞回しでのバトルが繰り広げられ、リングの外では登場人物外を示すかのように白の衣装ではなく、横縞模様のTシャツ姿で、イジーアスを演じた小田豊がレフェリー役をし、バトルの最中にレッドカードを突きつけたりする遊びの場面を入れている。
最後の見せ場であるアテネの職人たちによる『ピラマスとシスビー』の劇中劇での、ピラマスの「死ぬ、死ぬ、死ぬ」の場面では哀調を帯びた荘重な音楽で笑いを誘う一方、シスビーの自殺の場面は対照的に、能狂言風の囃子が入り、台詞も能狂言風となってそのギャップの感覚に笑いが走る。
パックの台詞のエピローグの場面では、'ARE YOU HAPPY?'と書かれた垂れ幕が上から落ちてきてホリゾント全面を覆い、それはまるで観客に強く問いかけているようでもあったが、パックの台詞が終わらないうちに場面が暗転し、パックの声は闇の中で聞こえ、そして消えていく。
このように斬新さなど特徴ある演出であったが、登場人物の人物造形に自分の波長に合わないものがあって、他の人が笑っている場面でも見え見えの感じがして自分が笑う気分にはなれず、全体的に退屈さを感じた。
シーシウスとオーベロンには文学座の鍛冶直人が演じ、彼とイジーアスを演じた小田豊以外は自分の知らない俳優ばかりであった(そのことに自体に抵抗感はな、くむしろ新しい出会いや発見を楽しむ方で、今回もそれなりの収穫はあった)が、他にはヒポリタとティターニアには高山のえみ、パックには北尾亘などが演じ、総勢14名の出演であった。
上演時間は、途中休憩はなく2時間30分。

翻訳/桑山智成、演出・美術/杉原邦生、振付/北尾亘、音楽/Taichi Master
8月23日(水)18時半開演、池袋・あうるすぽっと
チケット:(プレビュー公演)3000円、座席:F列4番


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